2024年2月19日月曜日

頑張れコキール


寿司、鰻と並んで私が大好きな外食ジャンルが「ニッポンの洋食」である。文明開化とともに入ってきた西洋料理を日本人向けにアレンジしたお馴染みの料理である。

 

今では喫茶店のランチの定番みたいにごくごく普通の食べ物になったが、老舗洋食店のこだわりの味を堪能すると気分がアガる。オムライスやクリームコロッケが3千円ぐらいの値付けだとバカらしく感じる人も多いが、たまには老舗専門店でそんな贅沢を楽しむのもオツだ。

 

私の場合「たまには」で済まないから困ったものだ。趣味みたいなものだから仕方がない。おまけに安い洋食屋さんには行けなくなってしまった。そっちのほうが美味しかったから物凄い敗北感だから結局、馴染みのある老舗に出向いてしまう。

 

ブランド志向が苦手な私だが、洋食というジャンルにおいては「店の名前」にこだわってしまう。絶対にハズレに当たりたくない私にとってはそれも一つの防衛策になっている。

 

洋食屋さんのメニューでマイナーな存在がコキールである。フランス風にいえばコキーユだ。ホタテの貝殻を更にしたコキーユサンジャックは古典的フレンチの人気料理である。

 

ホタテの貝殻ビキニをこよなく愛する私だが、コキールに関してはホタテよりエビやカニのコキールのほうが好きだ。牡蠣のコキールも滅多に出会えないがお店のメニューに見つければ必ず食べる。

 




マカロニグラタンのグラタン抜き、ドリアの米抜きと表現するのがコキールのわかりやすい説明だろう。料理としてはある意味単純だ。ベシャメルソースと具材をオーブンで焼き上げるわけだ。

 

そのわりにはマイナーな存在である。若い人はともかく大人でも知らない人は多い。実に残念だ。グラタンは誰でも知っているのにコキールとなると途端に無名に近くなる。

 

そもそもグラタン自体がコキールを安くて腹持ちの良い料理にするためにマカロニを入れることで誕生した料理だとか。元ネタのコキールがマイナーなのは不思議で仕方がない。

 

老舗洋食店でもコキールをメニューに用意してある店は限られる。全国の洋食屋さんがコキールをメニューに揃えるようになったらもっとポピュラーになるはずだから、ぜひそんなキャンペーンを展開して欲しいものだ。全日本コキール普及促進連盟の誕生に期待したい。

 

上の画像は銀座の煉瓦亭のコキールだ。ここのコキールはざく切りの玉ねぎの存在感が特徴的だ。具材の食感が食べごたえに繋がる。上品過ぎない仕上がりが気に入っている。これとフライものをおかずにチキンライスを味わえば極上の幸せがやってくる。

 

先日、日本橋の「たいめいけん」に出かけた。カジュアルな1階席と高級路線の2階席に分かれるのだが、コキールは確か2階席のメニューにしか無かったような気がする。

 


 

この日はエビフライを注文していたから被らないようにカニのコキールを注文。煉瓦亭のコキールとは違い濃厚なベシャメルソースそのものを味わう感じだ。これはこれで美味しい。普段ワインを飲まない私がこのコキールを前にしたらグラスで2杯は瞬殺してしまう。

 

1階席も捨てがたいが、やはりニッポンの洋食の真髄をアレコレ味わうなら2階席を選ぶのが賢明だろう。この日はエスカルゴにエビフライ、カニのコキールにタンシチュー、その後にオムライスで締めた。保守的かつ王道の洋食祭りが楽しめた。





 

極上デミソースの牛タンもウマいし、オムライスも泣くほどウマいのだが、やはり私の中で洋食の主役はコキールだ。この日はすべての料理を同行者とシェアしたがコキールだけは私が5分の4ぐらいせしめることに成功した。勝利である。

 

いつか私がトライしたいのが、コキールとクリームコロッケとドリアを一度に食べることだ。似通った味が被ってしまうから当然普段はそんな注文の仕方は避けている。でもよくよく考えたら私はベシャメルソース好きの“べシャメラー”である。

 

邪道と言われようとも一度はそんな変態的ディナーにニンマリしてみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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