2009年2月20日金曜日

役員給与の変な話

税金の決まり事でつくづく変だと思うのが役員給与の扱い。ひと言でいうと役員給与は企業の経費(損金)にできないのが原則。

専門家の間では当たり前のように認識されているが、専門家ではない私からすると実に摩訶不思議な理屈に思える。

とはいえ、実際の社会では、役員給与は経費処理されているのが普通。役員給与が損金になるための条件である「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与」のいずれかはクリアしている企業が普通だからだ。

大半の企業で問題ないのだから目くじら立てる話ではなかろうとの意見もあろうが、はたしてそうだろうか?

役員給与は企業にとって当たり前のコストだから損金になることが大前提で当然。そのうえで、これこれこういう支給形態だと損金に認めませんよ、というのが極めて正常な思考方法だろう。

役員給与は損金になりませんなどと聞くと、握り鮨にはトンカツソースが合いますと言われたような気がする。混乱してしまう。

一般的な企業が適用しているルールは「定期同額給与」だ。1か月以下の一定期間ごとの支給で、その都度支給額が同額であれば、その役員給与は損金にできますよという制度。

月給100万で年間1200万といった分かりやすいパターンであれば、経費性に問題ない。とはいえ、公務員給与じゃあるまいし、実際の中小企業においてコトはそう簡単ではない。

不況風のせいで資金繰りに苦しむ企業は増加中。当然、コストカットの一環で社長の給与を一時的にでも減らそうと考えることは珍しくない。珍しくないどころか、ヒジョーに一般的な話だ。

資金繰りに悩む社長が、ある時期、自分の給与を2割でも3割でもカットしたり、ある1か月分だけ返上したとする。この場合、税務上は「定期同額給与」に該当しなくなり、社長給与が損金にならない事態になる。

ほんまかいな・・と言いたくなる取扱いだ。損金になるかならないかは、黒字企業の税額に影響するだけで、資金繰りが苦しい企業なら、赤字が増えるだけという見方もある。ところがどっこい、赤字が不必要に増えれば、実社会では、貸し剥がしとか貸し渋りにあう。実に深刻。

そのため、減額分を経理上「未払金」で処理し、事業年度内で辻褄を合わせようという動きが盛んだ。そういう不自然な操作をしないと純粋な費用が税務上の経費にできないのだからヘンテコリン極まれりだ。


一応、制度上は「経営の状況が著しく悪化」すれば、減額改定しても役員給与を損金にして良いと規定されている。当初は曖昧だったこの「著しい悪化」の定義は、国税庁によって最近だいぶ具体的になってきた。

たとえば、「財務諸表の数値が相当程度悪化」したり、株主や銀行、取引先など「第三者との間において減額せざるを得ない事情が生じている」ようなケースは、減額しても問題なしと示されてはいる。

例示をすればするほど、その例示にもれているケースはアウトという認識につながるわけで、それはそれで問題だろう。

もともと、役員給与を利益調整のためにコントロールされないように国が打ち出したのが「定期同額給与」の考え方だ。端的に言って、節税タタキが目的だったわけだ。

ところが制度を整備した途端にドカンと不況がやってきて、節税どころではなく資金繰りにあえぐ企業の実務処理を直撃。中小零細企業をイジメるような事態を招きかねないわけだ。

「役員給与を減額したらどうなっちゃうの?経営が苦しいからそうするのに、そのせいで赤字が大幅に増えちゃうってマジ?」。

こんな声に応えて天下の国家公務員の頭脳が条件整備のために駆使されている。どこか変な話。もったいないことであり、滑稽でもある。

「役員給与は原則として損金にならない」。冒頭で書いたこの一点のせいで、摩訶不思議かつサッパリ意味不明な現象が起きている。

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