鳩山首相の脱税疑惑について二つの報道記事を引用したい。まず初めは産経新聞から。
▼鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金問題で、鳩山氏の実母(87)が東京地検特捜部に上申書を提出していたことが14日、関係者の話で分かった。
(中略)
実母は「詳しい経緯は覚えていないが、元秘書に毎月1500万円を渡していたのは事実。息子を応援するためだった」「利息もないし、返済もないので、贈与といわれてもしょうがない」などと記した上申書を作成、特捜部に提出したという。偽装献金の原資に対する認識は否定した内容とみられる。特捜部はこの資金提供を実母から鳩山氏への「贈与」とみており、贈与税の課税の観点からも上申書を検討した上で、実母に参考人聴取すべきかを最終的に決めるもようだ▼
続いて時事通信から。
▼鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金問題で、首相と弟の鳩山邦夫元総務相側に資金を渡したとされる母親が、同時期に両氏の姉にも資金提供していたことが14日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部もこうした事実を把握しているもようだ。政治と無関係の姉への提供が判明したことで、母親の資金が政治活動への支援ではなく、相続対策の贈与だった可能性が強まった。首相は姉と邦夫氏との3人きょうだい。姉は鳩山家関連の財団理事を務めているが、政治に直接のかかわりはない▼
このブログでも何度も書いてきたし、わが社の新聞でも以前から問題していた部分だが、ようやく大手メディアも“課税逃れ”の観点から取り上げはじめた。
これまでは、「母親から政治資金の提供を受けていた。政治資金収支報告でその内容をキチンと記載していなかった」という実にトンチンカンな角度からの報道ばかりだったが、ようやく常識的解釈が普通になりそうだ。
けた違いのリッチマンである鳩山兄弟が政治資金に窮して親からの資金提供を受けるという理屈は、どう考えても不自然。巨額な資産を持つ母親の相続税対策と見るのが当たり前だ。
「相続税対策」と書いたが、突っ込んで言えば「相続税脱税」と表現した方が的確だろう。合法的な相続税対策をしている人々から見ればあまりに図々しい手法だ。
政治団体を使って資金を移動させ、贈与税をまるで無視する手口は、少しでも税知識がある人から見れば悪質に映る。ましてや政治に無関係な娘にも同様な感覚で資金移動していたのなら純粋に脱税だろう。
「バレちゃったから贈与税を納めます」などという話で済んだら、世の中に税務署なんか要らなくなる。
年が明ければ確定申告の季節だ。所得税に限らず、贈与税の申告シーズンでもある。少なからず首相の言動が日本中の現場にネガティブな影響を与えることは確実だろう。
首相サイドは巨額な資金移動を「贈与ではなく貸付金」と主張する方向だったようだが、本当ならあまりにお粗末。一般的に贈与税逃れの場面で使われるチンケなやり方だ。
金銭貸借契約書もなく、利子のやり取りもなく、貸付金だという主張が通用すると思っていたらあまりに幼稚だ。
贈与税逃れ、相続税逃れを追及する税務調査では、たとえ、契約書があっても貸付金だという主張が否認されることもあるし、毎年贈与税申告をしていても、実態によっては一括贈与だとみなされることだってある。
検察当局の思惑はどこにあるのか、着地点をどのあたりで見ているのか実に興味深い。
ちなみに鳩山首相の父であり、巨額の資金移動の元となった鳩山安子氏の夫であった鳩山威一郎氏について触れてみたい。
元外務大臣、元大蔵事務次官という経歴で有名だが、税の世界にも足跡を残した人であることは知る人ぞ知る。
大蔵官僚時代、主計畑が中心だったが、関東信越国税局長も勤めたし、何といっても国税庁直税部長というキャリアが光る。
国税庁の直税部長ポストは、機構改革によって今は存在しないが、当時の大蔵省・国税庁にとっては重要ポストのひとつ。役割は直税、すなわち直接税全体の統括だ。
直接税とは、所得税や法人税の他、相続税・贈与税が基本。いうなれば、国家の相続税・贈与税政策のまとめ役というわけだ。
ウン十年経って息子が首相に上りつめたものの、よりによって相続税・贈与税の脱税疑惑にさらされているのも何かの因縁だろうか。
2009年12月16日水曜日
首相のパパは国税庁大幹部
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