2011年10月14日金曜日

ヌルい感じ

世の中、多くの分野で「マイルド化」が進んでいる。タバコやアルコール、はたまた人付き合いに至るまで、ほどほど感が重視されている感じだ。草食系男子なんていう情けない話も一例だ。

ショートホープとかハイライトを吸っている人はすっかり貴重な存在だし、アルコールだって、ハードリカー一辺倒という人は絶滅危惧種だ。若者の間では酒そのものを敬遠する風潮すらある。

クルマも同じ。国産車なんてミニバンみたいなファミリーカーばかりで、戦闘的なスポーツカーなんて滅多に見なくなった。

暴走族も予算がないから、原付バイクで走り回ることが珍しくないらしい。なんだかなあって感じだ。

キツい、ハードという感覚より、ソフトとかマイルドが好まれる世相だ。マイルドといえば、聞こえはいいが、一歩間違えれば、ヌルいとかユルいとか、そんなネガティブなイメージにつながる。

唐突だが、ソフトSMとかいう表現も気に入らない。「SだかMだかはっきりしろっ!」って言いたくなる。

SM方面に限った話ではない。自信がないとか、中途半端な感じを誤魔化す目的で「ソフト」という表現が都合良く使われている気がする。

マイルド、ソフト、すなわちヌルいとかユルい雰囲気が蔓延しているのは昨今の政治状況も同じだろう。

ドジョウとか言いながら謙虚な姿勢で信頼感を演出しようとしている野田首相。結局は凍結を決めた埼玉・朝霞の公務員宿舎問題について、わずか10分の視察で「腹を固めた」茶番にも呆れた。お粗末なヌルいパフォーマンスは、国民を愚弄する行為だと思う。

首相の先輩である鳩山、菅両氏は、沖縄の基地問題や自らの進退について、思いつきや場当たり的なヌルい言動で国民の信頼を失った。どうも政権交代を機に政治のマイルド化に拍車がかかっているように思えてならない。

懐古趣味みたいだが、その昔の総理大臣が醸しだしていた重みが懐かしい。田中角栄、福田赳夫、大平正芳、三木武夫・・・。虚像か実像かは知らないが、「正しい雰囲気」をちゃんと持っていたことは確かだ。

たとえ虚像だったとしても、立場に見合う雰囲気作りを怠っていなかったことは間違いない。虚像だろうが、適切なイメージ作りは大事だと思う。

野田さんのあの低姿勢ってどうなんだろう。人間として謙虚であることは大事だが、そこらへんのオッサンではなく、日本国内閣総理大臣だ。あのマイルドでヌルい感じでいいのか不安になる。

「正しい雰囲気」では決してないと思う。然るべきポジションにいる人は然るべき雰囲気を周囲に感じさせる必要があるはずだが、違うだろうか。

政治の世界だけの話ではない。民間の中小企業だろうと、トップがみすぼらしく威厳のカケラもなければ、社員は不安になる。

ただペコペコしてるだけのトップなら生き馬の目を抜く社会の中でいずれ立ち行かなくなるのは当然だ。

ヤクザがヤクザっぽい見た目でいることも、美人が美人としてのオーラを振りまくことも「正しい雰囲気」であり、そういう積み重ねが結局世の中を形作っている。


野田首相のマイルドでヌルい感じが意図的な戦略で演出されているのならともかく、ただ単に素の状態であるなら気持ち悪い。不自然、不必要な謙虚さは幼稚さの裏返しに過ぎない。

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