2013年4月10日水曜日

おい、グラパレ!


「おい、小池!」という衝撃的な呼びかけで一世をを風靡?した指名手配ポスターを覚えているだろうか。警察というお役所のセンスとしては秀逸だった。


そうはいっても、この小池氏、結局は捕まらないまま死亡していたことが判明してポスターの効果はよく分からないままだった。

でも、インパクトは充分だった。私が小池氏だったら、いたたまれなくなって自首したと思う。

今後も指名手配犯には「コラ、小池!」とか「出てこい、小池!」とか、そんな二番煎じで世の中の関心を集めればいいと思う。

まあ、そんなことより、あのポスターのせいで全国の小池性の人々の迷惑は相当なものだっただろう。私ですら、旧友の小池君を常に「おい、小池!」と呼んでいた。

さて、こんな話を書き始めたのは、まさに「おいっ!」と叫びたくなるような事件?に遭遇したからだ。

事件などと書くと変に期待されそうだが、一般的にはとても些細なことである。でも、私にとっては充分に事件である。

このブログでも何度も書いてきた私のアイドル?であるピラフがメニューから消えてしまった。大事件である。

場所は九段下のホテルグランドパレス。今年開業40周年を迎える老舗ホテルだ。ここの1階にあるカフェレストラン「カトレア」のピラフが事件の主役だ。

近くの学校に通っていたせいで小学生の頃から親に連れられて通った。ヒマな母親連合のおしゃべりタイムに子ども同志で付き合わされただけなのだが、ピラフを食べていれば貴公子のようにおとなしく座っていた。

その昔は、チキン、エビ、ホタテの3種類から選べたように記憶している。基本はコンソメやバター風味の昭和の洋食系ピラフである。ポイントは「シャトーソース」である。


エンジ色というか、茶褐色というか、どちらも的確ではないが、画像の通りの色合いの奥深い味わいのソースがピラフと一緒に供される。

チョビっと垂らしても良し、ドバッとかけちゃっても良し。すでに充分な味をまとったピラフに複雑なウマ味を加えてくれる。

その後、メニューはエビとホタテだけになった。私はエビがゴロゴロ入ったピラフにシャトーソースをぴちゃぴちゃ加えて食べるのが大好きで、事あるごとに食べに行っていた。

そんな私の心の友であるエビピラフがメニューから消えてしまった。ホタテのピラフ・シャトーソースは残ったのだが、エビピラフ消滅である。

おい、グラパレ!

まさにそんな感じである。

ホタテの香りはあまり好っきゃないねん!

だいたい、あのエビ自体は他の料理にもドバドバ使っているのだから、ピラフもエビかホタテの選択制にすれば済む話だ。数十年来のファンにとっては実に残酷な話である。

新しいメニューにエビピラフが載っていない衝撃にしばし茫然自失。めまいがした。血圧も上がったはずだ。泣きたくなった。ちょっと大袈裟だ。でも、ほんの5秒ぐらいだが本当にそんな感情に支配された。

そうはいっても、ピラファーである私としては泣いてばかりもいられない。しげしげとメニューを睨んでいたら新たなるピラフを発見した。

「シーフードピラフ・ニューバーグ風」だとか。

ニューバーグ?誰やそれ?って感じだが、ピラファーの矜持としては四の五の言わず味わってみるしかない。



やってきた新ピラフは、例のホタテと例のエビとここのピラフには書かせない大ぶりカットのマッシュルームとカニがミックスされていた。味付けもグランドパレスの基本通りである。

「エビ、ちゃんとあるやんけ~!?」と心の中で叫びながら貴公子のようなふりをして心を静める。

アノ官能的なシャトーソースではなく、見慣れぬソースがセットで出てきた。これがニューバーグなんちゃらのアイデンティティのようだ。

見ての通りホワイトソースである。クリーム系である。この店の人気メニューのグラタンに使われているホワイトソースとかぶっているような気がしないでもない。

ピラフにチョビっとかけてみた。悪くない。一般的には美味しい。でもアノ官能的なシャトーソースのオトナな味ではない。

初めてシャトーソースをかけてピラフを食べてみた人なら、ウムムという表情で目を丸くする可能性が65%ぐらいはあるが、こっちのホワイトソースだったら、普通にうなずくぐらいだ。目を丸くする確率は17%ぐらいだろう。

あくまで個人的な主観であり、数十年にわたる思い出というエッセンスが加わった思い込みのせいで、私に言わせればシャトーソースの圧勝である。

お店の名誉のために付け加えると、この日の同行者は、新しいソースを絶賛していた。ソースだけでも充分ワインの相手がつとまるという印象だそうだ。

ふ~んである。

グダグダ書いてみたが、シャトーソースは今まで通りホタテのピラフには用意されている。機会があったらシーフードピラフにそっちのソースを付けてくれとお願いすれば済む話だ。

いや、頑張って今までのエビピラフを作ってくれと懇願してみるのが先だろうか。

却下されたら、ホタテのピラフとシーフードピラフを両方注文して、シャトーソースだけ使ってシーフードピラフを食べてしまえばよい。

そんなどうでもいい想像を頭の中で必死に展開しながら、「事件当日」を混乱の中で過ごした。

我ながらかなり変な人だと思う。間違いなく、あの時間は、たかだかピラフに頭の中のすべてが支配されていたわけだから異常である。

きっと平和なんだろう。春だし…。

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