2018年1月31日水曜日

クルマ社会の忖度(そんたく)


先日の大雪のあと、しばらくスタッドレスタイヤを装着したコンパクトカーを借りていた。一昔前の日産ティーダである。主に雑用に使われている会社のクルマだ。

地方でレンタカーを借りる際も小ぶりなクルマを選ぶ。昔と違って国産のコンパクトカーは実に快適だ。

室内も結構広く窮屈な感じはあまりない。嗜好性の強いクルマが持つ「官能の世界」は皆無だが、ツールとしては最高だと思う。

あと10年、いや20年ぐらい経って、私の邪気が無くなったら国産コンパクトカーが欲しくなるのだろう。

便利さ、手軽さでは無敵なコンパクトカーだが、困った弱点もある。世間からの扱いだ。割り込みはさせてもらえないし、煽られたりもする。かなりシビアである。

俗にいう高級車との違いは明白だ。一言でいえば世間が“忖度(そんたく)”してくれない。ヘタすると小バカにされたような気がする。

高級車といってもデカいベンツや派手派手のフェラーリなどに限らず、そこそこ押出しの効いたデザインの国産車だって、わがティーダ君よりは、世間が配慮してくれる。

配慮とまでいかなくても、一応、道路上でその存在を意識してもらえる感じがある。それに比べて、一昔前のティーダなんてまったく無視されている。

真面目な話、これって安全面を考えると由々しき問題である。危ないったらありゃしない。

私の普段の愛車は、それなりに押出しの効いた顔付きをしている。別にエバって運転しているわけではないが、ティーダ君に比べると、割り込みや片側通行の譲り合いの際に親切にしてもらえる。

見た目の効用って意外に大事だ。動体視力や反射神経が弱ってきた中高年は、クルマ自体のパッと見のインパクトを重視して選んだ方が安全だろう。

道路上で繰り広げられる馬鹿みたいだが厳然と存在するビミョーなサヤ当ては、安全面に絡むほどの影響がある。頻繁に運転している人なら理解できると思う。

私自身、自分の前に割り込みたがっているクルマがご立派なベンツだったら、無意識のうちに譲っている。これがオンボロのコンパクトカーだったらウィンカーを出されても無視しちゃうこともある。

チンケな人みたいで情けないが、それが現実だろう。

いままで、随分とクルマを乗り換えてきた。ガラにもなく、キャデラックやSクラスのベンツに乗っていたこともある。いま思えば車線変更がやたらラクだったのだが、世間からの忖度のおかげだった。

その一方で、コインパーキングに一晩泊めていたら、ボンネット、トランク、ドア4枚すべてにウン〇の絵をギザギザに刻まれた事件もあった。

他のクルマに乗っていた時も開けていた窓越しに火のついたタバコを投げ込まれたこともある。

パッと見がエラそうな印象のクルマだと、一応そういうリスクもある。まあ、そんな珍事はいずれも若い頃の話だ。今よりも私の行動がガサツだったから被害に遭ったのだろう。

今ではすっかり牙を抜かれたようにノソノソと上品に運転しているから、世間様から攻撃されることはないはずだ。

考えてみれば、高級車と呼ばれるクルマがエラそうにブイブイ走っているのは実にみっともない。野暮の極みだと思う。

見た目だけでそれなりにアピールできているのだから、これみよがしにウェイウェイするのは相当カッチョ悪い。お里が知れるという言葉を思いだす。

などとエラそうに書いてしまったが、実際の私はまだまだ成熟していない。ノロノロ走っているポルシェなんかが前にいると、「ノロマならそんなクルマ乗るなよ、ボケ!」などと、お下品なセリフを一人で叫んでいる。

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