2018年12月19日水曜日

食べさせたがり


教えたがり、語りたがり。中高年の悪いクセである。やたらとゴルフのスイングを指導したり、自分の成功体験なんかを披露したがる人は多い。あれは格好良い姿ではない。

でも、その気持ちはちょっと理解できる。私は「食べさせたがり」である。ウマいものをやたらと食べさせたくなる。教えたがり、語りたがりと似たようなものだ。

飽食の時代を長く生きてくればウマいものに数多く出会う。目ん玉飛び出るぐらい感激したモノも多い。それを若い人達にも知らせたい。伝道師みたいな崇高な志である。ウソです。

高校生の娘にも、アレはウマいぞ、コレを食ってみろなどとグイグイ勧めてみるのだが、ヤツは蒙古タンメンとかタピオカドリンクのほうが嬉しいようだ。

せっかく寿司屋に連れていこうとしても焼肉屋に連行される。ちょっと張り合いがない。


先日、トリュフ未体験という若い人に目の前でガシガシとトリュフを削って仕上げるスペシャルオムレツを食べてもらった。

ウホウホ言って食べる姿を見るのは楽しい。こういう行動は大人の嗜み、いや使命みたいなものかもしれない。

学生時代、アホほど大食いだった私にいろんなものを食べさせて楽しそうにしていた祖父の気持ちが今になって分かる。

「オレはいろいろとウマいものには詳しいんだぜ」といった自慢モードではない。もっと単純だ。ただ嬉しい。

スーパーで売っているウナギしか食べたことがないという若者を上質なウナギ専門店に連れていけば感激してくれる。本気で感激されればこっちも嬉しい。

ひょっとしたら感激のせいで私の存在までもがその人の記憶に長く残るかもしれない。そうだとしたら、私にとっては生きてきた証を残したようなものだ。

ちょっと大げさだ・・・。


土鍋フカヒレ飯である。ジュージュー音を立てながら出てくる。さきほどのトリュフオムレツと同じく銀座にある「まる市」という料理屋さんでの一コマ。

フカヒレを割と良く食べる私でもワクワクする。しょっちゅう食べない人なら余計にムホムホしそうなビジュアルだ。

若い人が嬉しそうに、かつウマそうに食べるのを見るのは楽しいだけでなく、チョットうらやましい。

自分がガシガシ食べられなくなってきたから、尚更食べさせたがってしまう。時には「フードファイトみたいでつらかった」とか言われて反省する。

高級なものばかりではない。渋い大衆酒場の牛すじ煮込みやモツ焼だって、馴染みのない人にとっては画期的な味だろう。知らない人には教えたくなる。


この画像は知る人ぞ知る巣鴨の名門大衆酒場「千成」で撮った。私としてはトリュフよりオススメだ。

スタイリッシュなチェーン店の居酒屋では出せない得も言われぬ大人の味が楽しめる。

この店の最終兵器!?がウニスパゲッティである。パスタとは呼ばない。スパゲッティである。だしの風味とウニの風味が絶妙でいくらでもペロペロ食べられる。

本格イタリアンで出されるウニのパスタを知っている人でも、このウニスパゲッティには感激できるはずだ。


2~3人前のサイズなので、一人でふらっと飲みに行っても注文できないのがツラい。ウマいものは誰かとともに味わい、喜びを伝えていかないとダメだという深い教訓が秘められているような気がする。

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