2010年9月8日水曜日

ネクタイ

誰が言い出したか知らないが、クールビズとやらのおかげで、クソ暑い中ネクタイをしなくて済む風潮が根付いてくれた。

今年は過去100年の間でもっとも暑かったそうだし、9月に入っても猛暑が続いている。ネクタイを締めて背広の上着を着る場面は拷問そのものだ。

今日の話題は、「小沢vs菅」の行方がネクタイの有無も無関係ではないような気がしたから。

先週末の街頭演説では、小沢氏はかっちりネクタイに上着着用、菅首相はノーネクタイでワイシャツ一枚という対極のスタイル。

菅首相の襟の高いワイシャツは、「ただネクタイを外したオッサン」とは違う、いわゆるドゥエボットーニ。こなれた雰囲気を醸しだす作戦だ。

はたして、この部分がどういう影響を大衆に与えたのだろうか?菅首相の軽やかで爽やか、かつ若々しさを意識したスタイルはある意味、民主党っぽい感じ。

対する小沢氏は、あえて民主党っぽさに背を向けた古き良き時代の自民党を連想させる雰囲気とでも表現すると分かりやすい。


まるっきり私見だが、炎天下の中で上着にネクタイの小沢氏のほうが格段にプラスのインパクトを与えていたと思う。民主党への不満が強まっているタイミングだけに、民主党っぽい雰囲気をあえて抑えている戦略だとしたら凄いことだと思う。

確かに菅首相の見た目は爽やかだが、いま国民心理は次期首相に爽やかさを求めているとは思えない。「重量級かつ質実剛健」に飢えている人が多い。

素人っぽい頼りなさを振りまいていた安倍、年齢の割に軽さばかりが目立った麻生、そして、それこそ掴み所のない宇宙人だった鳩山・・・。

このところの首相のイメージに欠けているのは「どっしり感」、「重たいイメージ」に尽きる。「親しみやすさ」とか「爽やかさ」は、政権奪取後の民主党の迷走とも相まって下手をすればマイナス要因にもなりえる。

いつでも古典的な背広にネクタイという小沢氏のカチッとしたスタイルは、とっつきやすさを感じさせない。おまけに炎天下の演説でも汗をダラダラ流すわけでもない。

よく言えば泰然自若とした感じが、どこかオーディエンスに畏怖を感じさせる効果さえあるように見える。

本来、「エライ人」がとっつきやすいなどというのは幻想だ。そんなものはパフォーマンスに過ぎないし、本当にとっつきやすい人なら逆に幻滅される可能性すらある。

演説の様子も対照的だ。菅首相は不自然なほど身振り手振りを大げさに交える。不自然な動きに目が行ってしまって肝心の演説の中身が頭に入ってこない。媚びた感じにも見える。

小沢氏の場合、身振り手振りは最小。演説がウマいほうではないことを自覚しているのか、あえて、素朴な感じで正当派を演じ続けている。周囲に経つSPが猛暑でしんどそうな顔をしていても、高齢の本人は平気な顔で乱れることがない。

見た目だけでいえば、日本全国老若男女すべてをターゲットとする以上、小沢氏のカッチリ感が勝ちだろう。そのぐらい、国民の心理は保守的だ。

いざというときには、ドンくさいほどカチッとした「夏でもキッチリ背広にネクタイ」のほうが無難だ、間違いないという選択につながっていく。

もちろん、小沢氏について回るダーティーイメージは見過ごせない。「クリーン対ダーティー」とぶつかれば本来、勝ち目はない。

ところが、クリーンなほうの菅首相が、一気に支持を拡大できないところが面白い。ここが両雄決戦の大きなポイントになる部分だろう。「オトナの本音」がどういう審判をするかだ。

オトナの本音では、ベテラン政治家ともなれば、清濁併せ呑むぐらいが当たり前という感覚がある。若手でもないのにクリーン一辺倒を謳われると逆にバカっぽく見える。

「いろいろ悪いこともしてきたんだろうなあ」。小沢氏に対しては誰もがそう思っているのが事実だ。ただ、この程度のネガティブイメージは、ちょっとしたことで吹き飛ぶ。

普段カタブツで通している人物ほど気の効いたパフォーマンス一発で大いにイメージ転換が可能だ。炎天下で上着にネクタイのまま乱れずに天下国家を語る姿を見て、小沢氏にいにしえの重量級政治家を夢想した国民は相当数にのぼると思う。

カタブツがカタブツのままブレずに露出することこそが小沢氏にとって最高のパフォーマンスになっている。

選挙結果には議員間のポストの絡み、しがらみなど様々な思惑が交錯するのだろうが、国民投票みたいなスタイルだったら想像以上に「小沢首相」を選ぶ人が多いように思う。

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