こじんまりして、季節に応じたウマいものを出すカウンター中心の店。お客さんも騒々しくなく、寡黙な板前さんと、和装のおかみさんが切り盛りするようなシッポリ系の店。そんな店なら頻繁に通いたい。
そんな絵に描いたような店はありそうでなかなか見つからない。間違いなく池袋には無い。あったとしてもビール一本とイカ刺し一品で粘り続けるタチの悪いオヤジに占領されている。必然的に銀座、赤坂あたりで探すことになる。
銀座をぶらぶら歩いているとそれっぽい店を見かける。雑居ビルの上の方とか、地下奥深くとか、たいていは目立たずに佇んでいる。飛び込みで入ってもけげんな顔をされそうでなかなか開拓できない。
その手の店の良さは逆にそういう神秘性にあるのだろう。誰でも気軽に飛び込めるオープンな店なら冒頭に書いたような雰囲気は期待できない。
そんな店を常時開拓中の私なのだが、先日、ひょんなことからイメージ通りの店を見つけた。久々のヒットだ。
銀座で働く人が連れて行ってくれた。数寄屋通り側の雑居ビルの上の方にポツンとあった。小箱でカウンター中心。元新橋芸者さんだったおかみさんが和服でいそいそと働き、初老の板前さんが黙々と丁寧に料理を担当する。
窮屈な高級感はない。かといって適度なシッポリ感が漂う。実に銀座的なお店だと思った。うまく表現できないが、酒を呑みたくない時でも、調子よくお燗酒をあおりたくなっちゃう雰囲気。
世間様から隠れるほど悪いことはしていないのだが、隠れ家として通いたいと思う。もったいぶって店の名前は書かないでおく。
食べ物がまた高水準だった。誠実に料理された味の良さはもちろん、酒呑みのツボを押さえたメニューがまたニクい。メニューに値段が書いていないのも恐いけどニクい。
お通しは数種類出てきた。野菜中心のしっかりと手の込んだ料理。なかでもハマグリのヌタが奥深い味わいで、何を注文しても外れが無さそうだと確信。
実際いろいろ注文したが、全部真っ当に美味しかった。こんな店が近所にあったら肝臓がいくつあっても足りない。
メザシと小ぶりの赤ムツの一夜干しを食べたが、大げさではなく私の「メザシ感」が一変した。味の強さ、脂の乗り方ともに抜群。ちょっとビックリした。
カラスミや刺身、ナンコツ入りの鶏のつくね等々、奇をてらったメニューはないが、すべて高水準。おでんも結構な種がラインナップされていてメニュー選びがかなり楽しい。
変わり種といえば、皿うどんだろう。正当派小料理屋というかオーソドックスな和食屋さんには異色のメニューだ。これがまたウマい。ちゃんとウスターソースも出してくれる。ハーフサイズでも頼めるらしい。
たまに酔っぱらった夜更けに一人、こっそり「リンガーハット銀座店」でソースをベチョベチョかけて皿うどんを頬ばる私だ。そんな変な趣味がある私にとって実にニクい締めの一品が用意されているわけだ。
近いうちに改めて突撃しようと思う。
2010年9月24日金曜日
小料理屋と皿うどん
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