2012年1月18日水曜日

こだわりの男

最近、色々な分野でこだわりが無くなってきた。いいことなのか悪いことなのか、ちょっと悩む。

何事にもこだわりの無い人がスマートに見える反面、何かとこだわりを貫く人の魅力も捨てがたい。

もちろん、私にもまだまだ捨てがたいこだわりはいくつもある。ただ、以前ほど執着しない場面が多くなった。

純米酒だ吟醸酒だ、山田錦だ、精米歩合がどうしたとか、そんなウンチクで日本酒を選んでいた頃もあったが、最近はウマいと感じれば何でもありだ。

銘酒の品揃えが豊富な店でも、あれやこれや悩まずに「お燗の酒ちょうだい」で済む。

だいたい、日本酒なんて封を開けた途端に劣化が始まる。シュポシュポと一升瓶の空気抜きをして管理する店なんて一握りだ。そうなると銘柄で選んでもあまり意味がない。

私の場合、冷酒を飲む際にわがままが言える店なら、「口開け間もないヤツちょうだい」などと生意気なことを言ってしまう。

ひょっとして、それも「こだわり」なのだろうか。

葉巻にしても、このところ、軽め、重めを問わずキューバ産ならほぼ全方位対応になってきた。もちろん、キューバ産といえどもピンキリだ。そんなことは分かっているのだが、紙巻きタバコを禁煙して以来、葉巻のほうは「全部好み」みたいな節操のない状態になってしまった。

嗜好品こそ、こだわりが大事なのかも知れないが、どうにもテキトーな路線になってきた。

これが「オッサンとして楽ちんになること」の典型的症例なのだろうか。

とかく、20代、30代の人間特有の気負いとか力みのような感覚は40代も半ばを過ぎると薄まってくる。

達観という次元とも違うが、ようやく地に足がついたとでも言おうか。「不惑」なんだから当たり前ではある。

なんだかんだ言って楽になれば結構な事だ。読んで字の如く「楽」になれば楽しい。

などとエラそうに書いてみたが、変なこだわりがまだまだ無数にあるから、我ながら論理矛盾というか意味不明だ。


愛用のボールペンの画像だ。ウォーターマン製の一品。気付けばもう20年も使っている。他にもお気に入りはいくつかあるが、真剣に何かを書く時は決まってこれを使う。

その昔、原稿が手書きだった頃、毎日毎日こればかり使っていた。理由はいろいろあるが、端的に言って馴染んでしまったというしかない。

お茶を飲む時は、家でも職場でも斑唐津の湯飲みと決めている。自分でも理由は不明。割れて買い直す時も、湯飲みだけは斑唐津を選ぶ。

ぐい呑みや徳利はアレコレ取っかえ引っかえなのに湯飲みだけは妙にこだわってしまう。

水中撮影に励む時の機材のうち、BCD(ライフジャケットの役割の機材)も25年間同じものを使っている。スキューバプロというメーカーの古典的なもので、同社が今風の新作を出しても浮気はしない。3~4回買い換えたが全部同じもの。レンタルしなければならない時でも、同じ製品を必死で探す。

基本的に不器用なことも理由のひとつだ。潜水機材に限らず、使い方やボタンの位置が変わるのが苦手。家電製品も操作性が似ているので買い換える時は、単に同じメーカーという理由だけで選んだりする。

飲み食いになると、こだわりというか偏屈な傾向はもっと強くなる。何があっても発泡酒は飲まないとか、紅茶を選べる時はアールグレイしか頼まないとか、硬く炊いた米じゃなきゃ食べないとか、意地にも似た好き嫌いが結構多い。

マグロのトロが苦手なので、寿司屋に入っても「刺身を適当に盛ってくれ」などとは言わない。おまかせにすると、たいてい中トロがスターみたいな顔して盛られる。これが気に入らない。

とかなんとか言ってるクセに、脂の乗ったブリなんかも喜んで刺身で食べるし、喜々としてトロタクとかネギトロを巻いてもらったりするから一貫性には怪しいところもある。

話は変わるが、女性については昔から「犬、タヌキ系」に惹かれる。「猫、キツネ系」は苦手だ。ガリガリより小太りという志向とともに30年以上一貫している。

とはいえ、それだって「強いて言えば」「あえて言わせてもらうと」というレベルなんだと思う。猫顔の柴崎コウとか中山美穂にウィンクされれば、いとも簡単に好みなど変わってしまうのかもしれない。

なんだか話が七転八倒?してきた。

こだわりがあるのか無いのか、あったほうがいいのか悪いのか、結局良くワカランちんだ。

ひとつ言える事は、中途半端なこだわりは損をするということだろう。こだわりといえば聞こえが良いが、要は偏屈や意地っ張りと似たような感覚だ。それに囚われすぎると自分が知らなかった新しい喜びや楽しさを逃しちゃうことになる。

「こだわりを持った男でいよう」と何気なく思い込んでウン十年。そのせいで私も随分損をしてきた気がする。

人生を楽しむには柔軟性こそがカギなのかも知れない。

高田純次を目指そう。ちょっと違うか。

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