2012年7月2日月曜日

消費税増税をきっかけに

消費税の増税が本決まりになった。先週、衆院本会議を通過した修正法案にまとまるまでの経緯は、国会の委員会などを無視した、いわゆる国対的な密室談合との声もある。

本会議で採決される直前の特別委員会でも何ら法案に手が加えられることもなく、野党案丸飲みの3党合意による法案がスンナリ可決された。

当初案に盛り込まれていた所得税、相続税の改正は完全に棚上げされ、単に消費税を闇雲に引き上げる改正が実施されることになる。

経緯や内容への賛否とか民主党内の造反の話はさておき、今回の法案採決が与党の独断専行にならなかった点は注目に値する。

野党とケンケンゴウゴウの協議をしたというより単に野党の言いなりになった政権与党のズッコケぶりだけが目立った格好だが、それでも数の力で強引に増税に突き進むよりは幅広い意見が反映されたという見方も出来る。

民主党では、当初、消費税について複数税率を採用しない方針を決めていた。低所得者対策にはバラマキ型の給付で対応しようという姿勢を鮮明にしていた。

その後の修正協議では、野党案を受入れる中で複数税率導入に道を開いた。順当な成り行きだ。バラマキ型の給付制度よりも真摯な発想だと思う。

今回の改正は、日本の税制が消費税中心に転換していくことを意味する。見方によっては高所得者層への課税の在り方を見直す機会になり得るわけで、複数税率化による「メリハリ」に期待したい。

これまでの基幹税であった所得税の特徴は、収入に応じて税率が上がっていく累進制だ。稼げば稼ぐほど税率を高くするわけで、言ってみれば罰金的発想に支配されている。

経済が右肩上がりだった時代とは違い、最近は収入が上昇カーブを描いて順調に増えていく人など少数派だろう。

前年はまったく稼げなかった、来年は大赤字になりそうだ等の事情があっても、その年にたまたま結構な稼ぎがあったらドカンと税金を持っていかれる。それが現実だ。

そんな所得税の累進税率よりも贅沢品に高率課税する複数税率化された消費税のほうがメリハリがあって単純明快だ。

高額な税金を負担するにも納税者自らの消費行動の選択が伴う。たとえば、軽自動車とスーパーカーの消費税率に大きな違いがあれば、必然的に富裕層であれば自分の意思で高額納税を選択することになる。

逆も同じで、消費税を忌み嫌うならば、納税者の意思で高税率分野の商品を買わないという選択も可能だ。今よりも納得しやすいと思う。

稼ぐことを罪悪視するかのような累進税制より、基本の税率はフラットで、納税者の意思による贅沢に見合った高負担を求めるほうが理に叶っている。

すべてではないとはいえ、高所得者層の人々は、人より頑張って知恵を出して辛い思いをして必死に稼いでいる人だろう。その人達のモチベーションは、決して国に税金を払うことではない。ましてや弱者救済のために一生懸命働いているわけでもない。

経済を牽引するそうした階層の人々から罰金的に徴税することは愚策以外の何ものでもない。日本マネー及び優秀な人材の海外流出が加速するだけだ。

むしろ、そうした階層をヨイショしてより幅広い消費活動に精を出してもらうほうが賢明だろう。将来的な税源育成という意味でも、場当たり的な「取れるところから収奪する」政策は見直す必要がある。

当たり前のことだが大事な視点だ。

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