2020年4月27日月曜日

いまこそ綺麗事


自粛疲れというより「ビビリ疲れ」でちょっと困っている。出勤してもエレベーターのボタンを押すたびに手指消毒に励む。

トイレのドアに触れれば同じく消毒。宅配を受け取れば箱を消毒。打ち合わせするにもマスクを忘れれば仕切り直し。参考資料を持ち回りで回覧すれば手指消毒。ビビッってばかりで実に厄介だ。

コンビニに行ってもレジ袋が気になって消毒スプレーを噴射し、プロントに行ってもコーヒーカップや灰皿を触れば消毒だ。いちいち神経質になってバテる。



キリがないから適当にしようと思っても、自分が感染源になれば職場を消毒するハメになるし、打ち合わせに同席した面々も自宅待機になってしまう。そんな想像でまたタメ息である。

気疲れも加わって気分も上がらない。悪循環である。

世の中、そんな理由でイライラしている人は多い。SNSを眺めても攻撃的な批判や文句がやたらと目につく。

敵は未知のウイルスだから、究極的にはアーダコーダ行ったところで、結局誰も正解は分からない。

政府の経済政策もブレブレだ。ごく限られた人への30万給付がさんざん叩かれたら、全員への10万円給付に変わった。

予算を組み替えてまで政策を変更することは異例のことだが、今はすべてが異例の中にあるのだから、異例は当然だし、異例なことはある意味大歓迎だ。

賛否両論が飛び交う現金給付だって、当初の30万のほうが有難かった人もいるわけで、何をやろうが批判や文句はついて回る。でも、やらないよりはマシなことは確かだ。

いま世の中に必要なのは、決めつけない大らかさだろう。考えの違いをことさら否定するのではなく、それはそれという受け止め方をする意識が大事だと思う。

もちろん、ピントがずれた政府の対策や判断の遅れはどんどん叩くべきだ。非常時だから政府への批判をやめようという意見もあるみたいだが、それは筋が違う。非常時だからこそ声を上げないとマズいことは多い。

問題はそうした声ではなく、個人的な行動や考えを短絡的に攻撃したがる昨今の困った風潮である。あげあし取りやアラ探しみたいな批判や“正義厨”みたいに闇雲に他人を叩くことに専念するような連中だ。

徳島名物の阿波踊りが今年の中止を決めた。8月のイベントを今の時点で中止するのはバカげているという批判もある。

確かにそうかもしれないが、あれだけのイベントだから準備期間を考えれば仕方ないという声もある。それももっともだ。

そんなもんだろう。誰も正解が分からない以上、どちら一方に決めつけて、もう一方を攻撃までしちゃうのは感心しない。

もともと、日本人は中庸とか不完全なものを良しとする精神性がある。言い換えれば柔軟性にもつながる感覚だ。

たとえば、庭園造りを例に取ると、左右均等のシンメトリーの美を求めるのが西洋の感性だ。枯山水に不完全な自然の美を求める日本人の感性は独特だと思う。

器の世界にしても西洋食器は均一化された美しさを求めるが、日本ではいびつな歪みにも美を見いだし、取り合わせの妙を楽しむ。

ちょっと飛躍的な見方だが、こうした違いは「決めつける文化」と「決めつけない文化」の違いのようにも思える。

決めつけないという感覚は、曖昧さという意味でもあるが、時には曖昧さが武器になることだってある。

決めつけない、すなわち曖昧でいることは共存や理解につながる。それに比べて決めつけることは、排除や対立を招く。

排除や対立からは進歩はない。ギスギスするだけで遺恨が残って前向き話につながらない。

SNSなどで見かける乱暴で攻撃的な話を目にするたびに空恐ろしい気分になる。

そう書いたところで綺麗事に過ぎないのだが、今みたいなヘンテコな世の中だからこそ、あえて綺麗事を行動指針にするのもアリだと思う。










5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

阿波踊りだけでなく、イベントには準備があることを理解し、現場が真剣に考えて出した結論に攻撃しないようにしたい。今は、どれだけ真剣に考えたか、しか正解はないような気がします。

富豪記者 さんのコメント...

コメントありがとうございます。

こういう時期だからこそ、普段よりしっかり考えることや想像することが大事ですよね。

匿名 さんのコメント...

富豪記者様

いつも問題意識を刺激いただける記事をありがとうございます。
曖昧さと寛容さ、感じ入りました。
もし気が向くようでしたら、
ナイナイ岡村氏の風俗嬢発言と
沖縄の方のGWは来ないで宣伝について、
富豪記者様がどのようにお考えになるのか
お聞かせいただけましたら幸いです。

富豪記者 さんのコメント...

コメントありがとうございます。恐れいります。

岡村発言は昭和の頃ならシャレで済んだかもしれませんね。風俗を使う人なら誰もが感じていた話なんだと思います。彼が言ったような流れになるのはある意味当たり前ですよね。それも一つの貧困の固定化、格差の進展という意味では象徴的な現象だと思います。

公の場で発言しちゃったことはベテラン有名人としては完全なミスでしょう。本音と建前の使い分けが大事である以上、弁解の余地無しだと思います。正義厨に格好のネタを提供しちゃったのは残念ですね。

沖縄の件は、設備などの医療環境が本土の都市部とはかなり違う現実があることが大きいのだと思います。石田純一のことも来県者のイメージをかなり悪くしたでしょうし、拒否したくなるのも仕方ないと思います。

匿名 さんのコメント...

富豪記者様

早速のご丁寧なコメント返信ありがとうございました。
富豪記者様の着眼点や考え方には
気づかされることも多く
いつも本当に楽しく拝読させていただいております。
岡村さんは志村さんの後継者といわれていただけに残念でした。
沖縄はただただ感染拡大が起こらないことを祈るばかりです。
世の中コロナの話題一色ですが
全く違う話題のブログ記事も楽しみにしております。