時々訪ねる小料理屋的居酒屋?がある。限りなく銀座に近い新橋に位置する初老の男性が二人で切り盛りする渋い店だ。
雑居ビルの地下にあって目立たず客層もオジサマばかり。色気とは無縁だが個人店の見本のような風情に惹かれてコロナ前は時々顔を出していた。
店の名は「かとう」。某日、2年ぶりにフラっとノレンをくぐった。頻繁に通っていた客ではなかったのにちゃんと私のことも覚えてくれていた。昔ながらの酒場はこういう点が嬉しい。
メニューは壁に手書きされた雑多なラインナップ。値段表示がないところもこなれた?大人心をくすぐる。とりあえず魚も肉も揚げ物もひと通り揃っている。
特別うなるようなウマいものが出てくるわけではない。かといって得体の知れないヘンテコなものを食べさせられる恐れもない。
ちょうどいい店。その一言に尽きる。デートや接待向きではない。一人もしくは少人数でしっぽり過ごすのに適している。
その日、座って間もないタイミングで銀座のオネエサンからLINEが来た。なんとも不思議な話だが「かとうに行きたいから付き合え」という内容だった。
2年ぶりにフラッと訪ねて店主と大袈裟に旧交を温め合っていたタイミングにそんな誘いが来たわけだからビックリである。
もしかして私の行動は監視されているのかと思ってビビる。そのオネエサンとは長い付き合いで気軽な間柄だ。同伴向きとはいえないこの店にも二度ぐらい来たことはある。
見張られていたのかという疑念は消えないままオネエサンが来る前にクジラベーコンや牛タン塩焼き、冷や奴を食べながらグビグビ飲む。
店主と世間話の見本のような会話を繰り広げながら居心地の良さにとっとと酔い始める。コロナ禍で酒が弱くなった。まだまだ以前の感覚には戻らない。
そのうちオネエサンがやってきたので、なぜ今日の私の居場所がバレたかを尋問する。私の身体にGPSでも埋め込んだのかと問いただしたがあくまで偶然だと言い張る。
2年ぶりに一人しっぽり過ごすつもりが、結局バカ話大会に変更になった。一人酒も楽しいが、私は逆立ちしても女嫌いではないのでこれはこれで悪くない。食後にそのまま家に帰れないという罰則!が加わってしまったがそれも浮き世の義理である。
オネエサンは納豆やソーセージといった家で食べられるようなラインナップを黙々と食べる。オムレツもやってきた。
このオムレツがまた良かった。昭和的なオムレツとでもいおうか、古典的な昭和の家庭のオムレツみたいで心がホッコリする味がした。
ありそうでない店と言いたくなる。お勘定も安くはないけど高くはない。銀座のようで実は新橋という立地をそのまま体現したような日常使いに最適な店だと思う。
私のようにいい歳してシングルライフを過ごしていると日常的に使えるホッコリする店は大事だ。ライフラインみたいなものである。
一品料理が揃っていて気取らない雰囲気でキチンとした料理が出てきて、かつタバコまで吸わせてくれる店はなかなか無い。
こちらの画像もそうした店の一つ。わが家から歩いて2分の焼鳥屋さんである。高レベルの焼鳥だけでなくニクいツマミも多い。
私にとって一種の食堂みたいな感じだから時々は冷やしトマトなんかも注文して野菜不足解消に1ミリぐらいは効果を発揮している。
画像はタコの唐揚げと長芋の千切りだ。ホッピーを相棒に充電する時間が過ごせる。串焼きも絶品揃いなのでいつも食べ過ぎてしまう。
オシャレな店、ハヤリの店などに意識が向かなくなって久しい。開拓精神や好奇心が弱まっているわけだから褒められた話ではない。でも、快適に“日常メシ”を楽しめる店があるほうがQOL維持には大事だと思う。
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