半世紀にわたって朝ご飯はコメ食をモットーに生きてきたが、最近はパンを食べる機会が増えた。宗旨替えである。
きっかけはコーヒーの香りだ。この春、嗅覚が数日間死んでしまって困っていたのだが、ある日、コーヒーの香りを感じたことで嗅覚復活に気付いた。
あの時のコーヒーの香りはもはや天国に咲く花のようだった。天国に行ったことはないがそのぐらい感激した。
以来、朝起きるとドルチェグストのスイッチを入れてコーヒーを飲むことが増えた。人間変われば変わるものである。
コーヒーほどコメに合わない飲み物はない。仕方なく朝飯としてコンビニのサンドイッチや朝マックをウーバーに運んでもらうことが増えた。
いい歳したオジサマがコンビニのサンドイッチを朝ご飯にかじっている姿はシャバダバである。誰も見ていない一人暮らしとはいえ私自身の股間が痒くなる、いや、沽券にかかわる問題である。
で、スーパーでパンを買ってみたが元々パン好きではないからハッピーな食事にはならない。ついつい焼きそばパンなんかを買いたくなる。
根本的に私はパンの耳が嫌いだ。トーストも耳があるからイヤだ。必然的に食パン以外のパンを攻略するのが基本姿勢である。
惣菜パンや食パンでもない普通のパンを何とか楽しく食べる方法はないかと思案していたのだが、レンジでパンをふっくら温めるパンウォーマーなる便利グッズを見つけてさっそく使ってみた。
原理は分からないが、どうでもいいロールパンや詰め合わせの安っぽいクロワッサンがこの便利グッズのおかげで妙に美味しくなった。いや、非常に美味しくなった。
こんなグッズを使わずとも乾いた布を載せてレンジで軽くチンするだけで同じように格段に美味しくなるらしい。目からウロコである。
お次はパンに塗る相棒たちである。上質なエシレバターをてんこ盛りに塗りまくりたいところだが、そんなことをすると緩やかな自殺みたいだからそうもいかない。
しかたなく普通のジャムや安いバターをちょこっと塗って食べていたのだが、さすがにすぐに飽きたのでアレコレ探していたらピスタチオクリームというムホムホする一品を見つけた。
しっかり甘い。でも人工香料のようなピスタチオ風味ではなくちゃんとした本物の味わいを感じる。ほかほかと暖まったパンに塗ると「なんですのん、これ、バカウマでんねん」と標準語を忘れるほど官能的な味がする。
このピスタチオクリームもウーバーイーツで調達した。成城石井のチマチマした商品をウーバーで頼もうとした際にたまたま発見した。
ついでに注文した「果実60%のイチゴジャム」も思ったより美味しかった。甘いだけでなく正しいイチゴの酸味を感じる。ちょっと大人っぽい?味がした。
温めたパンにピスタチオクリームとイチゴジャムを交互に塗りたくって味わいながらコーヒーを飲むのは結構幸せな時間である。
甘いのだけだとさすがにキツいのでサイドメニューとして茹でたシャウエッセンなんかも用意すれば充分にハッピーな朝食の完成である。
これまで世界中を旅していくつもの高級ホテルで豪勢な朝食を味わう機会があった。パンがあまり好きではなかった私は、物凄い品揃えのいろんなパンが並んでいても、ほぼ見向きもせずに、ソーセージやハム、卵料理ばかり食べてきた。
パンに手を出した時でもクロワッサンの横っ腹をかっさばき、そこにハムやスクランブルエッグなどをギュウギュウ押し込みケチャップを投入して惣菜パンに変身させて食べるぐらいだった。
いま思えば残念な話である。いつかまたヨーロッパに行く機会があれば、ピスタチオクリームや日本製のピーナッツクリームを持参しようと決意している。
これまでの人生でまったく興味の無かった数限りない種類のパンの食べ比べをクリーム達の助けを借りながら断行してみようと思う。
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