銀座のお寿司屋さん「まつき」に久しぶりに行った。グルメガイドとかネット上のクチコミとも無縁のこのお店、北海道出身の大将が生きのいいものを食べさせてくれる。
雑居ビル3階にあり、はじめてではなかなか入りにくい気配だが、威張ったところや気取ったところもなく、大人がくつろぐには好都合。銀座では珍しく、小さい音ながら有線のBGMも流れていたりして、窮屈さはない。
北海道にこだわりがあるようで、甘いイカの刺身は山ワサビで味わえる。ホースラディッシュのようなものだが、独特の辛味がイカと抜群の相性をみせる。一度、山ワサビだけを手巻きにしてもらったが、スーっと鼻が通るような辛さで締めにピッタリだった。
どんぶりによそった炊きたてのご飯に山ワサビを載せて、チョコッと醤油を垂らしてかき込んだら、きっと極上だろう。さすがにそんな注文は出来ないので、いつも想像して喉を鳴らしている。
タラコも絶品、イクラもオリジナルの醤油漬けなので、酒を呑んでいると、いつもの「魚卵摂取病」が発症する。この日はその他にカワハギの肝醤油が実に美味しかった。車エビの塩焼き、内子と外子たっぷりのセイコガニ、お刺身をいくつかもらってから握ってもらった。
ボタン海老、しめ鯖、赤身の漬け、ウニなどを食べて大満足。お勘定も銀座にしては良心的。もっと頻繁に行かねばもったいない気がした。
この日のこぼれ話。メガバンクならぬ、「メガ広告代理店」幹部とおぼしきグループが、カウンターで酒盛り。主役である一番の偉いさんが、自らの若き日の武勇伝を語り尽くす。人の話に聞き耳をたてるのは無粋だが、結構おかしくて、ついついダンボのように耳を広げてしまった。詳細は割愛するが、合いの手を打つ部下に一人、スペシャリストがいたことに感心。
実に間合いよく、お偉いさんをヨイショするし、同僚にそのお偉いさんがいかに優秀かを説き続ける。見事なまでの“部下根性”。まさに腰ぎんちゃくのプロフェッショナルと呼べる空気作りに感心する。
その昔の東宝映画「社長シリーズ」で、森繁久弥にくっついている三木のり平を想像すれば分かりやすいかもしれない。社長シリーズが分からない世代には、三木のり平といえば、桃屋の「ごはんですよ」のCMといえばわかるだろうか。あんな感じの手揉みの似合うヨイショの達人だった。
漏れ聞こえたところによると、彼はお偉いさんが読んだ本は全部教わって読破しているとか。三国志に始まり、今どきの教養系新書モノまで、その追随ぶりに同席していた他の部下達はどん引き状態だったのが印象的だった。
きっと彼は、あのお偉いさんの派閥勢力拡張に日夜汗を流しているのだと思う。サラリーマンの処世術にもいろいろあるが、一定のレベルを超えれば、どんなやり方だろうと職人芸なのだろう。
イヤミでもなんでもなく、ただただ感心した。
2008年1月17日木曜日
銀座の鮨屋、三木のり平
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