2009年1月29日木曜日

派遣切り 京品ホテル 悪循環

ファーストフードのハンバーガーが100円で食べられるのには、経営側の努力あってのこと。企業努力の代表がコスト削減。変動費の調整が中心だ。

正規雇用者ばかりだったら暇な時間帯も忙しい時間帯と同様に人員をシフトすることになる。そんなことしていたらコストがかさんで100円バーガーは提供できない。これってごく当然の道理だ。

評論家の大前研一氏がこんな例え話で、昨今の派遣切り問題を語った。わが社が発行している経営者向けの税務専門紙「納税通信」のインタビューで、最近の表層的な労働問題をめぐる報道に警鐘を鳴らしている。

常勤雇用こそが正しく、いわゆる派遣切りを断行する企業は悪者であるかのような世間の風潮は、まさに「木を見て森を見ず」の典型だろう。

「不安定な非正規雇用より常勤雇用を増やすべき」みたいな変なプレッシャーが世の経営者に向けられている。はたして、それを実現したらどうなるのか。結末は、日本企業の海外流出だ。

大前氏は、非正規雇用というスタイルを含んだ日本の産業構造自体が、多くの製造業があえて海外に行かずに粘ってこられた要因だと指摘する。

この構造が保てないなら、結局は大企業の海外進出が加速し、派遣切りどころの話ではなくなる。職場自体が国内に無くなってしまうという内容だ。

至極もっともな話だと思う。

ところで、東京・品川の京品ホテルをめぐる元従業員の居座り騒動にも、昨今の派遣切り批判と同様のいやらしい臭いがした。

従業員がホテルに誇りを持っていようが、愛着があろうが、細々と客が来ようが、本体の事業が立ちゆかなくなってからでは、屁の突っ張りにもならない。

経営側に対してやたらと戦闘的な連中って、会社自体が不滅なものだとでも思っているだろうか。無くなっちゃったら元も子もない。

大前氏の主張に話を戻そう。

最近の雇用不安に対して、経団連会長も“常勤雇用が望ましい”という趣旨の発言をしたことに対して、大前氏はスジ違いだと怒る。

すなわち、消費者に良い物を安く届けようと世界中で闘っているのなら、軽々しく常勤雇用賛美などという無責任なことはできないはずだと指摘。堂々とそのことを主張し、それが通らなければ日本では生産ができなくなると声を大にすべきという趣旨だ。

至極もっともだと思う。

不況風に対応しようと企業側もあれこれ創意工夫をする。当然痛みも伴うが、その痛みを単純に悪だと決めつけ、企業を悪者視したらバカみたいな悪循環に陥る。

雇用安定などの本来なら政治がすべき役割を企業に押しつけ、今以上に負荷を課したらどうなるか。当然、企業の利益は減少する。そうなれば税収は減ってしまう。

利益の減った企業は従業員の給与も削減する。そうなると個人個人が納める税金もどんどん目減りする。

税収が減って、連動して社会保障費の集まりも悪くなる。そうなれば、最終的には雇用政策に回す予算だって縮小される。実にもったいない負の連鎖だろう。

大衆向けメディアはいつの世もどんなテーマも大衆ウケを狙う視点でしか物事を報道しない。

経営者層の目線で正論を報道するような媒体はありそうでないのが現実。「納税通信」では、これからも世の経営者の皆さんが少しでも溜飲を下げられるような企画記事を掲載していく予定。

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