2008年5月14日水曜日

骨董という名の魔力

やきものに興味を持っていれば、骨董の世界は避けて通れない。このブログでも以前、古い壺の話を書いたが、壺よりも手っ取り早い骨董入門が酒器類だろう。

手っ取り早いからこそ、マガイものの多さも目を覆いたくなるほど。私も随分ヘンテコなものを買ってしまった。

いまはすっかり現代陶芸作家モノ専門に集めるようになったが、器好きのご多分に漏れず、一時は李朝モノに興味が強まった。

李朝とは、朝鮮半島最後の王朝である李氏朝鮮時代を総称する表現。これが厄介。ひとことで李朝といっても、1300年代から1900年代前半までを指す。これだけ長い期間だからインチキも出没しやすい。「李朝モノ」といっても100年足らずの歴史しか刻んでいないものがザラ。いや一般に出回っているものの大半がこの手の李朝後期、もしくは李朝後の李朝写し。

私も勇んで韓国・ソウルを訪れ、骨董あさりを2,3度体験した。インサドンはもちろん、踏十里というややはずれにある骨董団地にも足を運んだ。

踏十里の骨董団地では、日本語ペラペラの老人が営む「ニセモノ専門」の店が印象深かった。手にとって品物を見ているだけで、「それはうまく出来ているでしょう。最上級のニセモノだよ」とズバリ言ってくる。
この地の卓越したニセモノ技術に関心。ニセモノを本物と騙して売っていないだけに値段もお安く、記念にいくつか購入した。いい感じの一輪挿しなど、わが家で結構活躍している。

李朝モノ(もちろん後期だが)で唯一、まとも、かつ気に入っているのが、見込み部分の底に金継ぎが三日月のように入っている盃。もとは豆皿だったような風体だが、直径8センチほどなので盃として通用するサイズ。

古くてもただカセてしまっている器も多いが、この盃は別。大事に使われ続けたであろう証拠ともいえるトロリ感のあるテカリが艶っぽい。酒を注いだ後に怪しく光る金継ぎの効果もあってお気に入りだ。

骨董屋が多いことで知られる西荻窪の某店でウン万円で購入。

李朝以外にも、南国ダイビング趣味が高じていろんな変なものを買ってしまった。

現在のタイを産地とする宋胡録(スンコロク)やクメール関係モノ、フィリピンあたりを産地とするルソン関係モノ、そしてベトナムあたりが産地の安南モノなどだ。

安物買いのナントカとはよく言ったもので、たいていが「具合が悪い」もしくは「イケナイ」。ニセモノやダメなものをこう表現するケースが骨董の世界では多い。

いざ買ってみて、まじまじと眺め、掌で遊んでいるうちに不思議と「やっぱり違う」という違和感を覚える。感覚的なものだが、実際その感覚はほとんど間違っていない。

わざとらしく、薬品で器肌をカセさせたもの、いやらしく作為的に割った後でわざとらしく継いで貴重な逸品に見せかけているものなどさまざま。2番目の写真は、安南の小壺との触れ込みで買ってしまった、うさんくさい一品。会社のデスクでクリップなどの小物を入れる器として使っている。

聞くところによると、東南アジア方面では、肥溜めに漬け込んで、独特の時代がかった汚れを染みこませるというタマンナイ話も聞いたことがある。

そんな恐ろしいことを想像するだけで気が滅入る。最近では、東南アジア方面でも、その土地土地で現在作られている器類を見にいくことが多くなった。伝統的なその土地の作風を現代風にアレンジした中には、結構、品のある作品も多く、骨董ばかり血眼になって探すより安心で楽しい。

そうはいっても、外国で骨董屋を見かけると、ついつい覗いてしまうのはナゼだろう。

「これはアンコールワット遺跡から盗掘された仏塔の装飾だよ」とかなんとか怪しく囁く骨董商。興味を持ったフリをして値段をたずねる。日本円にして5千円程度の金額を言ってくるんだからしょうもない。

そんな値段で、そんなものが買えたらお笑いだ。でも、そんな顔をせずに値切り交渉すれば、3千円ぐらいにまで下がるんだから、アンコールワットも困ったものだろう。

こんなレベルのやり取りになると、「ばかしあい」ならぬ「ばかとばか」だ。だから楽しい。

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