2008年6月6日金曜日

中国の親日感情


中国・四川大地震での死者数は、あの阪神大震災を10倍以上も上回る歴史的大惨事となった。地震大国日本でのXデーの際に、少しでも何らかの教訓が生かされることを願いたい。

被災者救済をめぐる日本チームの活躍が中国国内で大きな反響を呼んでいる。救援チームが諸外国の中で一番乗りだったことに加え、最近では、犠牲者の遺体を真摯に黙祷して見送る姿がニュースで紹介されたことで一気に親日派が増えたらしい。

国営通信社・新華社は“賛日ブーム”の広まりを危惧し、慌てて「感謝をしても歴史を忘れるな」という趣旨の人民に対して自制を促す報道を展開した。この辺が中国っぽい話ではある。

とはいえ、わずか1か月程度の間に日本人への融和意識が急速に高まった事実は率直に良いことだろう。ただ、逆に考えると、こうなる以前の現実に強い疑問を感じる。

乱暴な言い方をすれば、わずかな人数でわずかな期間の人道支援が嫌日感情を大幅に和らげることにつながったのに対して、これまでの日本外交は何だったのかということだ。

対中問題といえば、政府開発援助、すなわちODAの問題抜きに語ることは出来ない。無償資金供与や特別融資などの経済的支援からなるODAは外務省が握っているジャパンマネーである。

これまで約30年にもわたって総額3兆円を超える巨額なODAが中国に対して行われてきた。3兆円だ。こんな天文学的な資金を活用したうえで、嫌日感情の改善がまるで進んでいなかったことは日本外交の完全な失敗だ。

対中ODAと言えば、現地での理解度が低く、感謝もされていないという情けない問題がかねてから指摘されてきた。さすがに国会などで問題になったことを受けて外務省も中国に対して日本の貢献を積極的に広報するよう要請したものの、今度は「感謝の押しつけか」と逆に怒られる始末。漫才みたいだ。

ジャパンマネーが中国の発展に貢献したことは疑いようのない事実にもかかわらず、日本に対する融和感情が広がってこなかったのにはそれなりに理由もあるようだ。

厄介なのが、多くの中国人がODAを戦後賠償と認識していること。戦後賠償問題は、昭和40年代の田中角栄さんの時代に決着して終わった話である。

そんな誤った認識がいまだに支配的である現状を考えると外務省の責任はひたすら重い。ODAの出資者たる納税者を馬鹿にした話だ。

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