このブログで2度ほど書いた池袋の「鮨処やすだ」。開店して7か月ほど。さすがに混雑してきたようだ。一人でふらっと行くときでも、電話で確認しないと入れないこともあるので、確実にファンを広げている様子。
正直、池袋で美味しいモノを食べようという発想に無理があるのだが、ここは別格だろう。当然、そんな情報が広まれば、それなりに値は張っても訪れる人は増えるはず。
池袋エリアの人々は、“まっとうな旨いもの難民”であり、先般の副都心線開通で、埼玉人までもが池袋を素通りして新宿・渋谷に行くようになると、ますます池袋は困った状態が進む。
さて「鮨処やすだ」の話だ。基本的におまかせだが、こちらの意向を伝えれば柔軟に対応もしてくれる。画一的、お仕着せ的に食べねばならないスタイルとはちょっと違う。
突き出しも常に手が込んでいて、その先に出てくるものへの期待が高まる。刺身も、いつ行っても白身系が絶品で、この部分はお店の大きな特徴だろう。
イサキやタイ、キンキなど天然ならではの上質な脂ののりが味わえる。珍味類が好きな私には、肝つきのとこぶしとか、季節外れのようでいて極上の味わいだったアンキモ、特大シジミを酒に漬け込んだ珍味などを出してもらえる。みんな美味しい。
毎日わずかな数しか作らない限定の茶碗蒸しが絶品だ。私のブログ程度でお客さんが殺到するはずがないので、書いてしまうが、このブログの視聴者数がいまの10倍だったら、多分書かないで内緒にしておくと思う。
茶碗蒸しと書いてしまうと面白くない。バラ寿司ならぬ“バラ蒸し”と呼んだ方がピンとくる。具材がとにかく豊富。日によって違いはあるが、先日は赤ムツ(ノドグロ)にカニ棒、アワビ、白魚、確かホッキ貝も入っていただろうか。そして蒸し上がったところで、再びカニ、そして生ウニ、いくらをたっぷりのっける。
すべての素材が、その日の鮨ネタになる鮮度なのだから、まさにオールスター勢揃い。旨味がスクランブル状態で、正直ビックリするぐらい美味しい。隣で食べていたカップルは、途端に無言になってため息ばかりついていた。
ほろ酔いだった私は、ため息をついて悦楽状態の隣の人に、「これ凄く美味しいんですけど、ひとつ7千円も取るんですよ」と真顔で冗談を言ってみた。
笑ってくれるだろうと思っていた私に、その人は、表情を崩さず、「なるほど」とか言ってうなずいてしまったので困った。店の人がフォローしてくれてようやく笑ってもらったが、そのぐらい非日常的な味がする。実際の値段は聞いたことがない。でもそれを頼んでも頼まなくてもお勘定は大きくぶれないので、常識の範囲だろう。
この店の特徴のひとつがお酒のあれこれ。メニューにも気のきいた名前がラインナップされているが、お酒担当の係がいて、食べているものに合わせて、あれこれ勧めてくれる。
正直、お酒の種類にさほどこだわりのない私は、彼がいろいろ勧めてくることにちょっと鬱陶しさを感じていたが、勧められるままアレコレ呑んでいると、かなり楽しい。いまは全面的に信頼している。
先日は、珍味ばかり並べてニタニタしている私に石川の清酒・黒帯の古々酒を口開けしてくれた。しっかりした風味が珍味系との相性バッチリ。あっとい間に呑んでしまった。同じものをぬる燗で呑もうと決意していたのだが、変わり種を勧められ、あっさり従う。
出されたのは、埼玉の地酒・神亀の活性にごり。いわゆる活性酵母による発泡性が強い和製シャンパーニュと呼びたくなるお酒。発泡性の強さゆえ、口開けの時が結構大変。
簡単に開けたら中味が全部飛び出して、シャンパンファイト状態になるらしい。キャップの開け閉めを10回程度繰り返して、ガスが落ち着いたところで呑んでみる。
濁り酒は甘すぎるという印象があったが、全然そんなことはない。実にきりりとスッキリ。大ぶりの岩ガキを出してもらって、組み合わせてみる。なんとも官能的。
やはり、“人には添ってみよ”で、自我を引っ込めて素直に人様の助言に耳を傾けることは大切だと思った。大切というより、その方がいい思いが出来ることも多い。もっと素直にならねば。
このお酒、アルコール度数が18度もある。ぐいぐい呑んでたら結構酔っぱらった。
その後もいろいろと食べたのだが、肝心の握りの味を思い出せない。われながらだらしない。
2008年6月25日水曜日
「鮨処やすだ」
ラベル: 中年グルメ
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