2008年3月28日金曜日

相続税の脱税と税務調査


大阪の脱税おばちゃんの話は、週刊誌もこぞって取り上げた。相続税では過去最高となる28億円もの脱税。隠した遺産は59億円を超える。

http://mfeed.asahi.com/kansai/news/OSK200803110042.html

遺産を59億円も隠しちゃう発想は、常人では理解不能。逮捕された64歳と55歳の姉妹の日常を週刊誌が話題にしたくなるのも分かる。いにしえの言葉だが、怖いもの知らずのオバタリアンの構図だ。ある意味、そこまでの図々しさを持ち合わせてみたい。

この事件、75億円の遺産があったにもかかわらず、申告されたのは16億円だったとされる。さすがにこれじゃあバレる。税務署、国税局の目はそこまで甘くない。

国税側にすれば申告書が提出された時点で、「脱税見いつけた!」って感じだったことは間違いない。

相続税は、故人が亡くなってから10か月後に申告書の提出期限を迎える。受け取った税務署は、その時点から、内容を確認しはじめると思われがちだが、地域の名士とか、それなりの資産家、企業オーナー達の相続については、生前から税務署にマークされている。

毎年の所得税の確定申告書、財産明細書、法人からの退職金や配当の状況、金融商品の取引データ、不動産の譲渡所得の状況などが、いわゆる名寄せデータで管理されているため、遺族が相続税の申告書を提出してきたら、累積されたデータとのつけ合わせ作業が事務的に行われる。

上記した脱税事件も、おばちゃん達の親は、75億円の遺産を残すほどだから、大阪国税局なり地域の税務署では、生前から重要管理対象になっていた可能性が高い。

税務署では、役場に出される死亡届で、相続の発生を把握する。当然、地域の重要人物に相続が起きれば、内部で蓄積されたデータを確認し、総仕上げの準備に入る。遺族があさはかな下心に突き動かされても、どうにもならないのが実態だろう。

相続税対策といえば、納税額そのものを節約しようという角度からアレコレ検討される。合法的に節税できるなら、どんどん検討すべきだと思うが、その一方で、税務署対策が見逃されているのが現状だ。

相続税を申告した人の3件に1件には、税務調査が行われる。よほど単純な案件に調査が来ないことを考えれば、一定額以上の相続税申告をしたら、まず調査ターゲットになると思っておいた方が無難。

国税庁のデータでは、相続税調査によって何らかの申告もれが見つかるケースは、全体の90%近い水準。

平たくいえば、相続税調査が入ったら、無傷では終わりませんよということになる。

応対するのは、遺産の内容を完全に把握し切れていない遺族。やってくるのは、連日相続税調査ばかりこなしている職人的調査官。どうしたって、遺族としてはペースがつかめないのが現実だ。

大きな書店に行けば相続税関連モノがどさっと並んでいるが、どれを見たって税務調査の具体的な様子は解説されていない。

日本中探しても、なかなか相続税の税務調査の全貌をひもといたテキストやツールは見つからない。

知る人ぞ知る「相続税調査のすべて」は、解説本、チェックシート、想定問答集、具体的な調査の展開を再現したDVD、元税務調査官の覆面インタビューDVDを網羅した構成。実名は書けないが、全国の行政官庁も多数購入している。

前記したように全体の90%近くから申告もれが見つかってしまうわけだが、その平均額は都市部では1千万円近く。脱税を意図したものでなくても、解釈の違い、思い違いで簡単にそんな金額規模になってしまう。そうした非常事態を少しでも招かないためなら「相続税調査のすべて」は、決して高くないと思う。

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