2008年4月3日木曜日

相続 争族 遺言の現実

いまの時代、何かと遺言の有効性が取りざたされている。信託銀行の遺言信託もすっかり普及し、それなりの規模の書店に行けば遺言関連本は百花繚乱だ。

万一の際、財産の整理や思いを伝えることはオーナー経営者なり、一家の大黒柱として当然。ただ、一部には誤った遺言万能論的な思い込みも存在する。今回は「遺言の現実」を取り上げたい。

モノの本に取り上げられているのは、自筆証書がどうしたとか公正証書なら云々といった解説がほとんど。肝心なのは、いざというときに遺族のいさかいを抑えられるかという点。

資産があって親族の構成が複雑なら、少なからず「争族」は起きるのが世の常。遺言があっても同じ。遺言は、流血の殴り合いを口喧嘩ぐらいに収める効果はあるが、決して万能ではない。

法律で定められた最低限の相続人の権利、すなわち遺留分に配慮しない遺言が残されていた場合、結果として、その部分を捻出するため、最終的には遺言に沿った分割など不可能になる。

遺留分に配慮して「財産の8分の1を遺贈する」と書き残したとしても、遺産総額の“分母”の認識が一致しなければ、いつまでもカタがつかない。遺産のすべてがキャッシュであれば遺産総額の分母は争いようがないが、遺産には評価額を算出しづらい不動産や美術品、各種の権利などがあるため、遺産総額の認識は相続人ごとに変わりかねない。

おまけに困ったことに相続税の申告にあたって用意されている各種の税額減額特例は、申告期限までに遺産分割協議が整っていることが条件になっているものが多い。すなわち、申告期限までに遺産分割に関する話し合いが決着していないと、みすみす税金が安くなる特例が使えなくなるわけだ。

こうなると遺言があっても、焦りもあって故人の意に反した遺産分割協議をしてしまうハメになりかねない。

結論から言えば「遺留分の金額を見定めたうえで相続人ごとに具体的な資産を特定した遺贈内容を記述する」。これが肝心。「みんな仲良く」とか「誰それを大事に」といった内容を記述したいところをグッとこらえて「具体的」かつ「特定」をキーワードにすることが大切だ。

「納税通信」「オーナーズライフ」では、こうした相続の現場におけるナマナマしい核心部分にスポットを当てることが多い。机上の理論バナシだけ頭に詰め込んでも、実際の相続の際には通用しないことが多いので、ナマの有益情報が必要な方は是非ご活用を。 

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