2008年4月14日月曜日

くいだおれとハッピーリタイア


独特な風貌の人形で有名なレストラン「くいだおれ」が今年7月に閉店するニュースがあちこちで話題になっている。

閉店を発表した記者会見で、例のくいだおれ人形の今後が未定とされたことで、一種の争奪戦の様相を呈してきた。

たかが人形、されど人形で、大阪名物だけに獲得できればその事実が発表されるだけで、獲得主にとっては格好の宣伝材料になる。今後もオークションのように価値が暴騰していくことは間違いない。

ニュース報道によると、4月初めの閉店発表から10日あまりで、くいだおれ人形の譲受け希望は100を超えたそうだ。飲食業界だけでなく、業種を問わず申し込みがあるようで、なかにはどこかの自治体が町おこしか何かの目的で手を挙げているらしい。

こうした過熱ぶりを見るにつけ、閉店を上手に発表した「くいだおれ」の経営陣の知恵に感心する。その後、過熱する人形争奪戦を想定していたと考えるのがビジネス上の常識だろう。

場合によっては、全体の構想をプロデュースしているコンサルタントがいたとしても不思議ではない。閉店、すなわち廃業前のブラッシュアップ(磨き上げ)として巧みな戦術だ。

昨今、一般的になってきた中小企業レベルでのM&Aでは、重要なポイントになるのが、譲り渡す側のブラッシュアップだ。いかに自社を魅力的に演出するか、いかに付加価値を感じ取ってもらえるかは、M&Aの最終合意価格に大きく影響する。

とかく曖昧な管理体制が珍しくない中小同族会社の場合、オーナー経営者の、いわば“個人勘定”のような部分が多い。常勤していないオーナー一族関係者への報酬とか公私の区別が曖昧になっている不動産など上げだしたらキリがない。それ以外にも、慣例で続いている非効率的な雇用や支出など様々なしがらみが中小企業には存在する。

M&Aを計画、実行する前段階で顧問税理士に依頼して、こうしたドンブリ部分を整理するのが理想的だが、税理士自体がM&Aに消極的だったり、無知だったりすると、そのこと自体がM&Aにブレーキをかける要因になってしまう。税理士のタイプ自体も問題だが、税理士が相応のネットワークを持つM&A仲介機関に関わっているかも大事な課題だ。

中小企業庁の調査によると、中小企業の経営者が事業承継に困ったときに相談する相手は、トップがダントツで税理士となっている。

もっとも税理士といっても、税金や経理関係の専門家であってM&Aの専門家ではない。M&Aの際に重要になる企業の内部数値には精通しているので、ついつい頼りになる存在と認識されるが、やはりM&A仲介機関との連携の有無によって、経営者の良きパートナーとなるか否かが分かれる。

NP事業承継支援協会は、税理士業界に半世紀以上関わってきた業界の老舗新聞社が母体となって、全国1300名の理事税理士によって構成する組織。承継問題で悩んでいる経営者にとっては、間違いなく頼れる存在だと思う。

「くいだおれ」の例をみれば分かるが、ひっそり廃業するのであれば、人形フィーバーは当然起こりえない。経営者のリタイヤ後のキャッシュフローと密接に関連する話だ。

上手な戦略によって事業の幕引きをすることで、経営者のハッピーリタイヤは実現する。そのためにはパートナー探しがなにより重要だ。

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