2008年4月10日木曜日

愛人、マンション、その先に

先日、知り合いの“武勇伝”を又聞きした。知り合いといえどもさほど親しくないので、本人に真相は聞いていないが、要は愛人にマンションを買ってあげたという話。

漏れ聞こえてきたのは、女性の方から。仕事もやめさせられて、完全に囲われた際に、かなり豪華なマンションを買ってもらったので、大層幸せだという話。

ちょっと前時代的な話にも聞こえるが、この武勇伝のヌシはまだ40歳代後半。親から引き継いだ福祉関係の事業を手掛けている。

女性が「買ってもらった」と認識しているマンションは、はたして誰のものだろう。名義はダンナの方なのか、女性なのか、はたまたダンナが経営する会社名義という可能性もある。

まだ20代のその女性の視点では、「自分が好きに暮らせるマンション」であれば、確かに「買ってもらった」と考える。でも、名義までその女性のものにすることは常識的に考えられない。

仮にそうだとしたら、早々に税務署から「不動産購入のおたずね」と称する文書が舞い込んでくる。登記データを随時チェックしている税務署からすれば、一般的なルーティンワークだ。

返答がなければ「怪しい」として電話などでチェックが入る。一応、おたずね文書に回答しようにも、資金出所を細かく記入させられるため、20代の女性では、理路整然とした説明は難しい。

仮に女性名義であれば、莫大な贈与税がかかることはいうまでもない。

ダンナ個人のポケットマネーかダンナの会社マネーのいずれかが投入されたと見るのが妥当だろう。

ダンナ側からすれば、個人、法人名義にかかわらず、今の御時勢ならちょうど良い投資物件の購入ぐらいの感覚かも知れない。

会社名義の場合、そこに住まわせている住人から適正な家賃を取っていないと、「営利追求を目的とする法人として経済的合理性がない」などの理由で問題になる。タダで住まわせているのであれば、相場家賃との差額が経済的利益の供与という理屈になる。

こうなると雇用関係のない女性に対してでなく、ダンナである経営者へのみなし給与という話になる可能性が高く、その分の所得はりっぱに申告もれという話になる。

もっと厳しく考えれば、マンション購入自体が、経営者の個人的目的であれば、購入金額すべてが経営者のために支出されたものという見方も出来る。

この場合、役員賞与認定はさすがになくても、購入資金が経営者への貸付金として処理すべきとみなされる。市中金利相当分を会社が取ってなければ、その分は、ダンナの所得計算上、申告もれになる。

世の富裕層には、この手の“武勇伝”は多い。メディアや各種情報でもこうした話はいくらでも出てくる。マンションまで行かなくても、クルマを買ってやっただの、店を出させタダの結構よく聞く話。

でも、一連の話の裏側に必ずつきまとうのが税金の話。かといって書店に並ぶ税金解説書には、この種の話はまず取り上げられない。

オーナー社長向けの専門新聞「納税通信」では、この手の微妙な話を頻繁に取り上げるため、ツボを知りたいオーナー経営者から結構アツい支持を得ている。

“武勇伝”にお心当たりのある方には一種のバイブルとしておすすめ。

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