2008年4月18日金曜日

中村征夫さん、水中撮影

このブログでも何度か水中散歩と水中撮影の話を書いてきたが、実はここ2年ぐらいの間にダイビングへの執念というか情熱が薄れてきていた。そろそろやめちゃうんだろうなと思っていたのが本音。

20年以上の間、手なずけてきた趣味を終えてしまうのはもったいないような気がしたが、自分のモチベーションが上がってこないのでは仕方ないと考えていた。ところが、先日、あるテレビ番組をきっかけに、そんな気持ちが吹っ飛んだ。今年もヘルニアと相談しながら潜りに行くことに決めた。

きっかけになった番組は「ソロモン流」というドキュメント。毎回一人の人物に密着して生きざまや日常を追いかける番組だ。3月だったか、この番組に登場したのが、水中写真家の中村征夫さん。

水中写真家という肩書きを使ったが、木村伊兵衛賞や土門拳賞などを受賞している一流のカメラマンだ。

20年ほど前に水中写真に興味を持った私が、熱心に読みふけったのが、当時ダイビング専門誌に掲載されていた中村さんのエッセイ。ユーモアあふれる文章で、海の生きものへの愛情や自然への畏敬の念に満ちあふれており、文章からにじみ出る人柄に魅せられた。

クリエイティブの世界は、その作者の人間性が少なからず投影される。水中写真にしても同じだと思う。中村さんの作品にはどこか優しさが漂う。

エッセイでは、海での体験、レジャーダイバーの危険な部分、海を通した子育ての経験談などいろいろなテーマが取り上げられていたが、中村さんの文章には、「上から目線」がまったくない。実に穏やかで視線がフラット。テレビ出演の際の語り口も同様だ。何気ないことのようで結構すごいことだと思う。

ミーハー的なことが一切嫌いな私が、以前、一度だけ、中村さんが主宰しているホームページに書き込みをしたことがある。内容は、内緒だが、本人から心のこもったご自身の体験談を交えた意見をいただいた。

そんな中村さんの大がかりな個展が4月29日から日本橋三越で開催される。詳しくは公式ホームページへ。

http://www.squall.co.jp/

ソロモン流という番組で印象的だったのは、東京で取材されているときの顔と、ミクロネシアの海辺で取材されているときの表情がまるで違っていたこと。これが、私が再び潜水旅行に行くことを決めたきっかけでもある。

暖かい南国だから表情が生き生きしていたという単純な話ではなく、真冬の東京湾に撮影に行く中村さんを追っかけていたシーンでも彼の表情は輝いていた。現場にいるときの顔、没頭しているときの顔という意味で、実にいい表情をしていた。

番組では、その一方で、中村さんがハリ治療に通う姿も捉える。60代を超えたベテランダイバーの身体はかなりの負担にさらされており、40代の私が潜水行きをおっくうがるなんて、まさに10年早いと思った。

さて、中村さん話はさておき、私の潜水計画だ。ここ10年ぐらい、いわゆるマクロ撮影に主眼をおいて潜っていた。接写レンズを使って小魚に接近して撮影するものだ。

このドアップの魚は顔の直径が3センチ程度の魚。肉眼で見るよりファインダー越しに見えるその迫力が楽しくて接写は面白い。

2番目は20センチぐらいのアデヤッコという魚。こちらは超接写ではないが、顔中心に写し込むことで、口の周りの微妙なグラデーションがくっきり描写することが出来る。

マクロ撮影の特徴は、海の透明度が悪くても写真の仕上がりに影響が少ないということと、動き回らないで被写体と向き合えることだろう。オジサンダイバーには向いているかもしれない。

でも、いま私が撮りたいのはワイド写真。以前、このブログでも紹介したフィッシュアイレンズの魚眼効果を使った広々とのびやかで気持ちのいい写真が無性に撮りたい。


計画しているのはフィリピンのセブ空港からクルマで3時間ぐらい走ったモアールボアール(MOALBOAL)。10年前に一週間ほど滞在したのどかな場所。近くにあるペスカドール島周辺は浅瀬のサンゴがピキピキに元気だったので、改めて攻めてみたい。

なにより夜遊びなんか出来ない田舎だということが大きい。最近は、夜遊びをもくろみ、都市近郊の海で中途半端なダイビングをしていたから、次回こそ水中撮影に没頭して心を清めようと思う。

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