2008年4月25日金曜日

長生き税

長寿医療制度の問題が騒々しい。そもそも後期高齢者医療制度という名称があんまりとのことで、急きょ名称変更に至ったわけだが、名前を変えたところで中身は一緒。ぐちゃぐちゃ状態の年金制度の整理・立て直しも済まないうちに、高齢者の年金から新たな負担を差し引くというもの。

高齢者の感覚では、「長生きするのは罪」と言われているようなもの。いわば「長生き税」だろう。首相自身が説明不足だったと釈明するほど、制度の周知がなされていなかったわけだが、この手の国民に追加負担を求める制度って、なんとなく、こそっと導入されるような傾向がある。

法律は建前上、立法機関である国会によって誕生する。とはいえ、実際の作業は官庁が請け負う。知恵者揃いの官僚は、当然、省利省益を考えてあれこれ自分達が運営しやすいようにメリットを盛り込む。

以前、税制上のビミョーな新制度が突然登場した経緯についてある国会議員に取材したことがある。彼の口から出たのは、「法案の中にこそっと役人が盛り込んでたんだよ」。国会議員としてちょっと情けない話。「政」と「官」の関係を見直さない限り、“官僚制社会主義国家”といわれる現状は打開できないだろう。

今回の「長生き税」もそうだが、国民負担を新たに求める制度は、官僚サイドから見れば「とりあえず導入ありき」であって、導入前に話題になったりするのを避けようとする傾向がある。導入時はこそっと、そして“小さい”制度としてスタートさせ、その後大きく育てればいいという感覚だ。

消費税の時もそう。世界中で最も低い水準の税率で導入し、おまけに滅茶苦茶な免税・非課税制度を設けたことで国民のアレルギーを抑えようとした。あれについては、政治レベルでの妥協が大きかったが、根底にあるのは、「小さく産んで大きく育てる」発想だ。

税制のなかには役割を終えたものも多いが、なぜか廃止・撤廃されずに存続しているものも珍しくない。たとえば地価税。地価暴騰抑制のため導入された制度だが、土地の値段が暴落しはじめた頃に廃止されるのかと思いきや「当分の間、課税を停止する」という改正が行われ、現在も立派に制度としては一応存続している。またいつでもスタートできるわけだ。

社会保険や税金の各種制度は、いったん導入されれば、その後は導入時ほどの議論はないまま負担増が決まりやすい。

今回の長寿医療制度も、いまになってさかんに野党陣営が糾弾しているが、導入後に騒いでもちょっと迫力が感じられない。テレビでよく見る鬼の首でも取ったような顔で与党を攻めるセンセイ達の表情は、「なんだかなー」って感じだ。

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