若い頃、職場の音といえば、ガーガーやかましく鉛筆削りがうなる音とピーヒャラわめく電話回線FAXの音だった。
当時、編集の職場で使う鉛筆は、洒落た細身のHBとかではなく3Bの太さ。データ入稿という便利な技があるわけでなく、印刷工場の人達のため、文字は、あくまで濃く大きく書くことが普通だった。
当時わが社の原稿用紙は、B5サイズの用紙に72文字しか書けないほど1マスが大きく、相当乱暴に書き殴っても、字が判別できるようになっていた。
ペンダコという言葉が死語になるのにともない、今や職場の音は、キーボードのカタカタ音ばかり。メールのおかげでFAXの音もたまにしか聞こえない。
若手記者の多いわが社の編集現場では、40代の私などは旧人類で、苦手なデジタル系の話が分からずに恥ずかしい思いをしょっちゅうしている。
旧人類記者として何が得意で威張れるのか考えてみた。漢字に強いほうだと自負していたのだが、キーボードカチャカチャ組に仲間入りして以来、すっかり漢字が書けなくなった。
「薔薇」とか「檸檬」とかをスラスラ書けたら格好いいと思うが、今の私には無理な注文だ。読むほうはそこそこ自信があるが、昔は書けたはずの漢字が随分と書けなくなってしまった。
檸檬や薔薇という字をコースターの裏にさらりと達筆で書いて見せて、ホステスさんを口説いている作家の話を聞いたことがある。案外、格好いい戦略かも知れない。
それなら、読むほうに自信がある私には、どういう戦略が成り立つだろうか?
料亭旅館あたりでは、墨で書かれた達筆のお品書きが登場する。あれをすべてサラリと読みこなして解説してあげたら、結構格好いいかもしれない。
でも、旅館にたどり着いているのなら、口説き終わっているだろうから、そんな場面でハッスルしても仕方ないかも。
そんなことで気を引こうと思うのなら、和歌や短歌、漢詩でもそらんじて見せたほうがよっぽど粋だ。
そっち方面の勉強でもしようかと急に思い立ってしまった。
ところで、冒頭に載せた写真は、とある場面で遭遇した料理のお品書き。
「とうもろこし」と読めたことを、やたらと大げさに誉めてくれた人がいたので、読むだけでなく書けるように練習するため撮影してみた。
いったい、私は何がしたいのだろうか・・。
2008年10月6日月曜日
難しい漢字
ラベル: 世相
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