2022年8月26日金曜日

せつないエビフライ

 

エビフライを嫌いな人はあまりいない。老若男女から支持を受けている食べ物である。にもかかわらずエビフライは主役として扱われることが少ない。ちょっと気の毒である。

 


 

トンカツ屋さんにちょくちょく出かける私は「ついでの一品」としてエビフライを注文することが多い。あくまで主役はトンカツでエビフライは脇役だ。

 

でも時々エビフライのウマさに悶絶する。多分にタルタルソースの魅力によるところが大きいが、そんな時はエビフライを大量にむさぼってトンカツは2切れぐらいで構わないとさえ思う。

 

エビフライの専門店があればわりと頻繁に行く気がする。大中小さまざまなエビフライを揃えタルタルソースも様子の違う種類が用意されていたら実に魅力的だ。サイドメニューにミニトンカツでも用意すればバッチリである。そんな店がどこかにないものだろうか。

 


 

冒頭の画像は東京駅近くにある「平田牧場・極」のエビフライだ。金華豚ヒレカツが目当てだったのでエビフライは一本しか頼んでいない。やはり脇役になってもらうしかなかった。一本だとどこか淋しげである。

 

軽くレモンを絞ってタルタルソースを塗りたくったエビフライの味は世の中に溢れるありとあらゆる食べ物の中でも上位に入るレベルだと思う。なのに脇役。しつこいが何とも切ない話である。

 

某日、午後の中途半端な時間に銀座の煉瓦亭に行った。空腹での一人メシである。とにかくエビフライが頭の中を占拠していたので小海老のフライを注文する。小海老といってもそこそこのサイズで量もしっかりメイン料理として成立している。

 



 でも白いご飯をもらってエビフライだけで済ます気にはならないのが洋食好きな私の悪い癖である。オムライスとコキールまで頼んでしまった。結局、エビフライは脇役的な感じになってしまった。エビフライには申しわけなく思っている。

 

エビフライが何本もあるとタルタルソースで味わうだけでなくソースで食べたり、ソース+タルタルで楽しむことが出来るのが良い。心なしかエビフライも自分のバリエーションの変化に喜んでいるように見える。

 

ちなみにエビには血中コレステロール値の上昇を抑えたり糖の吸収を阻害したり高血圧が原因となる血管障害を予防する効果があるそうだ。おまけに肝機能を高め、解毒作用の強化、胆石の予防効果まであるらしい。

 

本当だろうか。どこかに書いてあったからきっと本当だろう。そう考えると単なる揚げ物ではなく健康食品にも思えてくる。もっとエビフライに脚光をあててやりたくなる。

 

別な日、日本橋の「たいめいけん」に出かけた。高級路線の2階席に陣取ってエビフライを注文した。確か4千円近い値付けである。さすがに主役級のポジションだ。実際にやたらと立派なエビフライだった。画像ではわりにくいがビッグサイズが3本である。高値にも納得だ。

 


 

デカいサイズのエビフライを頬張るとサクッとした直後にグワッシという大エビならではの噛み応えが楽しめる。つかの間の幸福感である。直後にタルタルソースの味が口の中に広がって泣きたいほどハッピーな気持ちになる。

 

滅多にない“主役エビフライ”である。日頃、肩身の狭い思いをしているエビフライもこの日は大いに存在感をアピールしてゴキゲンな様子だった。私もありがとうエビフライ!と叫びたくなった。

 

しかし、エビフライと同じぐらいのタイミングで極上タンシチューが運ばれてきた。これまた妙に高値の一品だ。洋食屋さん業界のいわばスーパースターである。一口食べたらウマくて卒倒しそうになった。

 


 

さてさて、前菜などその他もろもろ食べて大いに満足したのだが、翌日になって私の記憶はあくまでタンシチューに占拠されていた。コッテリとした官能的な味のインパクトが強かったのだろう。

 

せっかく主役のつもりで頑張ってくれたエビフライのことをちょっと忘れてしまった。やはり彼は主役になれない運命を背負わされているのだろうか。

 

ふびんだ。すまん、エビフライ・・・。

 

 

 

 

 

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