このところ「中華飲み」の機会が増えた。なぜか私は中華といえば「飲み」より「メシ」という固定観念に縛られていた。いわゆる街中華の店に入る時もあくまで食べることが目的で、アルコールは二の次というパターンが多かった。
最近は魚アレルギーのせいもあってか、お寿司屋さんや割烹系の店に行く機会が減り、ややガッツリ系のつまみで飲む機会が増えた。そうなると餃子的なウマいものを求めがちで、必然的に「中華飲み」の機会が増えたわけだ。
ちょこちょこ訪ねる銀座の維新號で1万円オーバーのフカヒレをぺろぺろ食べるのも富豪的には楽しい時間なのだが、高級中華の店だと、ついついメシ中心になってデロデロになるほど飲まない。やはり街中華や大衆路線の店だと、良い意味で雑に飲み食いできて楽しい。
先日、わがバンドメンバーとモツ焼き屋で飲み会があった。さんざん食べて飲んだ後に、二次会としてふらっと入った店がなかなか良かった。八重洲にある「泰興楼」という店だ。街中華というよりは、敷居の高くない本格中華料理店というイメージだ。
一次会で散々飲んだのにやたらと食べまくってしまった。チャーハン、ラーメン、天津飯、五目焼きそば、餃子、春巻き。これを3人でペロッと食べてしまった。2軒目のツマミという次元ではない。暴飲暴食の極みである。これをウーロンハイで流し込んだわけである。
全員しっかり胃もたれである。飲んだ後の〆に軽く中華を、という予定がバカ食い大会になってしまったわけだ。翌日まで引きずった体調不良を、お互いまだまだ若いなあなどと意味不明な励まし合いをすることでゴマかすことになった。
別な日、銀座のオネエサンと夕飯を食べることになり「中華飲み」に適した店を紹介してもらった。銀座界隈で新たな店を探すには、夜の蝶から情報を仕入れるのが手っ取り早い。
銀座7丁目にある「むとす」という店だ。パッと見はカウンター中心のモダンなバーみたいな雰囲気で中華屋さんには見えないが、ちゃんとした中華料理のメニューがずらりと揃っている。個人的に中華飲みにオシャレ感は不要なのだが、これはこれで穴場っぽくてアリだろう。
値段は銀座にしては手ごろだった。料理の味も本格的で、味も油もやや強めだったが、飲み中心のツマミとしては問題なし。むしろグイグイ酒が進む味付けともいえる。
中華に限らず、炭水化物は酒のツマミにならないと勝手に思い込んでいた私なのだが、最近はそんな固定観念から脱却して「炭水化物飲み」を楽しむようになった。
中華の場合は焼きそばやチャーハンである。これをワシワシ食べながら紹興酒だのウーロンハイをグビりと飲むのは最高だ。お寿司屋さんでも握りに移行する際にお茶に切り替えるのが習慣なのだが、最近は握りを頬張りながら酒をちびちびやる楽しさがようやくわかってきた気がする。
50歳を超えてずいぶん経つ。これまで勝手に作り上げてきた自分の流儀みたいなヤツを崩してみる新鮮さを楽しんでいる。いろいろな事への執着みたいなものに捕らわれない柔軟さが出てきたのだろう。
いや、すべてがテキトーでルーズになってきたのかもしれない。