予定の無い休日は録画したままになっている映画やドラマを見るのが定番の過ごし方だ。
たいていは肩の凝らないコメディー作品をお茶とお菓子をお供にアホヅラで見ている。
一人モノの特権みたいな時間だが、一人モノだからこそ、たまに「ヤバい」作品にぶつかるとドンヨリしてしまう。
ヤバい系のもの、すなわち淋しい「中高年一人モノ」である。身につまされてビビったりアセったりすることがある。
先日、たまたま2作続けてみたのがそっち系だった。ちょっと参った。
最初は渡辺謙が主役の単発のスペシャルドラマ「5年目のひとり」。山田太一作品である。
東日本大震災で家族や友人を一気に失った50代の心を病んだ男の物語である。
「中高年一人モノ」とはいえ、そういう設定だから個人的には身につまされる感じとは違う。それでも一人暮らしの侘びしさが強調されていて切なかった。
見終わったあと、次はもう少しホッコリしそうな映画でも見ようと選んだのが「星守る犬」という作品だ。
ところがどっこい、ホッコリというよりドンヨリしてしまった。でも素晴らしい映画だった。5年前に公開された作品で主演は玉山鉄二と西田敏行である。
身元不明の男と飼い犬の遺体が発見される。男は死後1年ほど経っていたが、飼い犬は死んで間もない状態だった。市役所の福祉担当職員が、男と犬がたどってきた旅の足跡を訪ね歩くというストーリーだ。
犬と飼い主のホノボノ話かと勝手に想像していたのに大違い。淋しく孤独死を迎える中高年の現実を突きつけられた感じだった。
西田敏行演じる主人公は真面目に生きてきた男だがリストラされて職を失う。それを機に仲の良かった家族関係が変わってしまい結局は離婚届を突きつけられる。
そして人生をやり直そうと身の回りの物を詰めた車で愛犬と旅に出る。新天地を求めたものの世の中はそう甘くはなく結局はクルマの中で愛犬と二人で最期を迎える。
なんともまあ切ない。ポイントは主人公の男は普通に平凡に生きてきたという点である。何も悪いことはしていない。少しだけ無器用だったというだけだ。
元は平凡な家庭の主だったわけで、そういう意味では一歩踏み違えたら「普通に起こりえそうな話」である。そこが妙に胸が痛くなる話だった。
身元が分かる物をすべて処分し、クルマのナンバープレートも外し、車台番号まで削りとった男はどんな気持ちだったのだろう。
家族に迷惑をかけたくないという優しさだったのか、はたまた去って行った家族に世話になどなりたくないという意地だったのか。どっちにしても物凄く哀しい。
見る人が見れば、犬の賢さや忠誠心みたいな部分が作品のキモなのかもしれないが、私の場合、もともと犬に興味が無いので男の気持ちのほうに感情移入してしまった。
と同時に、犬すら身近にいない我が身の境遇が空恐ろしく感じた。
「やっべ~、犬すら飼ってないじゃん、オレ・・・!」
そんな感じである。
時に涙をこぼしながら映画の世界に没頭し、見終わった後、近所のペットショップに行こうかと思ったほどだ。
バカである。そういうことではない。ペットの有無ではない。
身近な人との絆がどれだけ強いか、心の底から信頼し合える人間関係が築けているか、うわべだけの生き方をしていないか、そんな課題を突きつけられているように感じた。
そんなことに思いを馳せる年齢になったことを今更ながら痛感する。月日が経つ感覚が短くなり、いま思えば30才ぐらいからの20年はアッという間に過ぎた。
まあ、将来を心配してもキリがないが、着々と偏屈ぶりに拍車がかかっている自分の身の処し方は折に触れて真面目に考えないといけないのだろう。
やっぱり犬でも飼ってみようか。いや、技術の進化が凄いから、アッという間にペットロボットが想像以上の水準になるはずだ。それを待ったほうが良さそうだ。
いやいや、そのうちペットどころか“ロボット奥さん”なんかも登場するかもしれない。
優しく看取ってくれるならロボットで充分かもしれない。
そんな結論になっちゃうことが大問題である。
頑張ろうっと。