平尾昌晃といえば中年世代からすると「カナダからの手紙」である。というか、デュエット相手の畑中葉子のその後の怒濤の展開を思い出す。
「後ろから前から、どうぞ~」である。知らない人、ゴメンなさい。。。
話を戻す。平尾昌晃さんのお家騒動がワイドショーのネタになっている。平たくいえば、息子さんと後妻さんが著作権や会社の経営権をめぐってスッタモンダしている話だ。
オーナー経営の中小企業にとっては珍しくない話だ。対立する遺族にはそれぞれ言い分はあり、感情のもつれが加わるから簡単に決着しない。
遺産という存在そのものが厄介である。すべてが現金なら適当に分け合えるが、住んでいる家とか経営している会社の株式などは、あくまで金銭換算した上で総額を弾き出さなければならない。
総額が〇×円だから3分の1なら〇△円。そんな単純計算は現実的には無理だ。
零細企業オーナーの親父が亡くなったとする。遺産は時価3千万円の家とつぶれかけた会社の自社株(額面3千万円)だけ。相続するのは会社を継いでいる息子と嫁に行った娘の2人。
単純に考えれば息子が自社株、娘が家を相続すれば済むが、ことはそう簡単ではない。つぶれかけの会社でも不動産資産があれば、その価値が自社株評価に跳ね返る。額面3千万円でも評価上は1億円になることもある。
3千万円と1億円だったら公平じゃないからモメる。この場合、娘のほうは、会社を解散してお金にかえて公平に分けろなどと言い出す。
こんなトラブルは日本全国でゴロゴロ転がっている。ごくごく普通に起きている。
争いを最小限に抑えるには遺言ぐらいしか手立てがないのが現実だ。遺言などと聞くと一部の金持ちだけの話だと思っている人は多いが、大きな間違い。相続人が2人以上いれば、残念ながらトラブルになると考えておいたほうが無難だ。
平尾昌晃さんの息子さんは、「父の遺言がどこかにあるはず」と語っている。これもまた大きな問題。遺言の保管場所もトラブルの元になる。
多くの人が自筆の遺言を残す。公証人役場で作成してもらう公正証書遺言とは違って、自筆の遺言のほうが手軽だからそっちが主流だ。
自筆証書遺言にも一定の書き方をする必要があるのだが、それ以前に大きなリスクが遺言書自体が無くなったり、隠されちゃったりする可能性だ。
遺言があること自体、法定相続することに比べて誰かが不利になるわけだから、不利になる人が遺言を見つけたら隠したり捨てることも珍しくない。
今年成立した改正民法では、新たに保管場所の規定が設けられた。なかなか効果的な政策だと思う。
自筆の遺言を法務局で保管してもらえる制度がそれ。公正証書を作成するより手軽で、自筆証書遺言に付きものの家庭裁判所による遺言の検認作業も不要になる。
知っておいて損のない話だと思う。
思えば、私自身、先代が的確な遺言を残してくれていたおかげで、70年以上の社歴がある会社を相続のゴタゴタに巻き込まずに済んだ経験がある。
事業の永続性を考えることは大事な経営判断だ。オーナー経営者であれば規模の大小を問わず「オレはまだまだ死なない」などと強がってはいけないと思う。
私もいつのまにか「磯野波平」と同じぐらいの年齢になってしまった。個人的にたいした財産など有りはしないが、自社株みたいな話には絡んでいるので、もっと真剣にいろいろ考えないといけないのかもしれない。
何だか今日は、初級民法講座というか、法務局の回し者のような話になってしまった。