娘との旅行、第二の目的地はローマ。パリほどの寒さではなかったものの、ローマも冷え冷えとしていた。コロッセオも雨模様で街の散策も傘が欠かせなかった。
列に並ぶことが何よりも苦手な私なので、コロッセオやバチカン美術館のチケットは日本を出発する前にネットで確保した。これからローマに行く予定がある人には強くオススメする。
雨で寒いなか、この作戦は正解だった。いずれも大行列を横目にスイスイ入れて、無駄な待ち時間を過ごさずに済んだ。
泊まったのはバチカンにほど近いエリアにある「NH Collection Roma Giustiniano」。イタリアっぽさ、ヨーロッパさとは無縁な近代的なホテルだが機能的で快適だった。親子旅ならこういう路線のホテルが何かと無難だ。
ヨーロッパのホテルは全室禁煙が普通だ。私にとっては、いかに隠れてタバコを吸うかが課題なのだが、今回の部屋には広いテラスがあったので、室内の椅子を持ってきて快適にスパスパできた。
バチカンの大聖堂にかかる虹を眺めながら優雅にタバコが吸えたから、それだけで大満足。
珍しく晴れた日は、いそいそと旧市街を散策。「ローマの休日」で有名なスペイン階段に行ったり、トレビの泉で娘にコインを投げさせたり、正しいオノボリさんとして過ごす。あの映画はオードリーヘップバーンの可憐さよりグレゴリーペッグの渋さがポイントだと娘に力説する。
私にとってローマは大学生の時以来だ。運悪く扁桃腺が爆発してホテルで寝込んでいたので、すべての名所が初訪問である。
これまでイタリアのアチコチに出かけて、いっぱしの顔をしているクセに、ローマを知らないのは問題である。
というわけで、観光だけでなくせっせと名物パスタを食べまくってきた。
ローマ名物といわれるのがカルボナーラだ。画像のようなリガトーニというショートパスタで出てくることが多かった。これは「Fortunato al Pantheon」というちょっと高級路線の店で食べた一品。アルデンテを通り越したパスタの固さが気に入った。まさにカッチカチ。私好みだった。
日本式とは異なり、生クリームは使わず、卵とチーズと黒コショウで味付け。具材もベーコンではなく、豚ホホ肉の塩漬けが定番。この塩辛さが味の決め手みたいだ。
もう一つの名物パスタ「アマトリチャーナ」も塩漬けの豚ホホ肉が使われている。トマトの酸味としょっぱい肉のバランスが絶妙で何回でも食べたくなる味だった。
これは別の店でカルボナーラとアマトリチャーナを相盛りにしてもらった時の画像。見ているだけでヨダレがこぼれそうになる。
イタリアの面白さは地域ごとに定番料理がアレコレ揃っている点だ。パスタにしても地域色が強い。
チーズもローマのほうはパルミジャーノではなく、ペコリーノロマーノという羊の乳が素材のものが主流だ。カルボナーラもそっちのチーズじゃないと本物ではないんだとか。
まあ、ウンチクを書き始めても仕方がない。
要するに今回もムキになってパスタを食べてきた。カルボナーラ、アマトリチャーナの2大巨頭以外にもアレコレ味わってきた。
印象的だったのが「カチョ・エ・ペペ」。塩とコショウという名前のパスタだ。ローマの貧困地区が発祥らしい。文字通り具は無い。チーズとコショウだけで味付けしてある。
冷やし中華も具ナシで食べるのが一番好きな私である。具ナシのパスタと聞いたら食べないわけにはいかない。
ホテルのスタッフにオススメレストランを聞いて繰り出した「3Quarti」という店で食べた一品は最高だった。コショウを数種類使って味に複雑さを出しているようで、濃厚なチーズの風味も絶妙でムホムホいいながら頬張った。
この店では他にもポルチーニの幅広麺バージョンと、スズキとピスタチオのパスタも食べた。幸せMAXである。
朝はホテルでシャンパンブレックファーストと洒落込み、昼と夜はパスタばかり食べていた。朝も画像で分かる通り、「どん兵衛」をメインにするヘンテコメニューだったから、ローマでの3日間は私の身体は麺類に占拠されていた。
娘の手前、パスタしか食べないのはヘンテコだからトリッパやリゾット、肉料理も注文するのだが、私の関心はあくまでパスタである。
娘は娘でジェラート屋めぐりにハッスルしていたから、必然的にパスタの摂取量は私に集中する。デブまっしぐらだ。
パリではマカロンやエクレアを頬張り、ローマではジェラートをペロペロする。これって女子高生にとっては天国だろう。きっと娘の旅の印象はスイーツだらけだと思う。
あと数年もしたらブランド品がどうちゃらこうちゃらと言い出すはずだ。スイーツに夢中になっている今の年頃なら私の財布も慌てないで済む。そんな考えでジェラートは常にダブルで食べさせた。
娘もデブまっしぐらだった。
さてさて、話がまとまらなくなってきた。最後に載せる画像もパスタだ。バチカン近くを散策していたときに通りすがりで入った店で食べたトリュフのパスタである。
これまたチーズベースのソースとトリュフの相性が抜群で麺の固さもバッチリで叫びたくなるような味だった。
やはり私にとってはフランスよりイタリアのほうが食事の点で満足度が高い。”タンスイカブラー”にとってパスタの国は夢の国である。
そんなことより、旅行が終わってから娘のインスタグラムに綴られていた父親への感謝の言葉を見つけて、ホロホロと泣きそうになった。ワガママで面倒くさい娘にずっと付き合ってくれてありがとう。これからも良いパパでいてくれといった趣旨だった。
そのぐらいのことで感激するのが父親の弱点でもある。そんなもんだ。
まあ、その一点だけでも旅の意義はあったと思う。バッチグーである。