ラーメンを熱く語る人は多い。そんなラーメン論を必死に語る人々をついディスってしまうこともある私だが、本当は私だってラーメンを熱く語りたい。でもこれがなかなか難しい。卒倒するほどウマいラーメンを食べたことがない。
ネットで評判の名店みたいな店で食べてもしっくりこない。ヘタするとヘンテコな味付けにイラつく。とはいえサッポロ一番は大好きだから意味不明だ。ラーメンに関しては“味音痴”なのが私の実態である。
先日、人気店だと聞いてコレド室町にある「麦苗」というラーメン屋さんに入ってみた。化学調味料不使用で素材にこだわった店だとか。
一言で表すなら綺麗なラーメンだった。美味しいか否かと聞かれたら美味しいと答える。でも私にとっては何かが違う。「これじゃないんだよな~」である。私がラーメンに求めているのはパンチとか味の強さみたいな上品とは対極のジャンク的な要素だと痛感した。
とはいえ、激辛だとかやたらとしょっぱい家系と呼ばれるラーメンは苦手だ。あれは大人が口にする食べ物ではないと思う。「蒙古タンメン中本」をいつもベタ褒めする娘の気持ちは全く理解できない。
パンチが効いて味も強くて、かといってしょっぱすぎず辛すぎずとなると、どんな路線が向いているのだろう。東京人だから醤油ラーメンが基本だと信じてはいるが、あれはあれで面白み?に欠ける感じもする。
味噌ラーメンが一番好きなのだが、京橋にある人気店「ど・みそ」の味噌ラーメンはクドすぎてまったく美味しく感じなかった。
昭和の頃に食べた名も無いそこらへんのラーメン屋の普通の味噌ラーメンが恋しいのだが、それを必死に探すほどラーメンにこだわりがないからなかなか思ったような味に出会わない。
昨年、一昨年と食べに行った札幌「みそ吟」の味噌ラーメンは個人的には完璧だと感じたが東京には支店がない。せめて自分の行動範囲ぐらいではウマい味噌ラーメンを探してみようと思っている。
先日、水天宮にある「しばらく」という店で豚骨ラーメンを食べた。ヘタな豚骨ラーメン屋だと不気味な匂いが漂ってきて不快だが、こちらは爽やか系で良かった。豚骨ラーメンはナゼかチャーシューが薄切りなのが気に入らないが、スープもちょうどいい加減の味わいで私には珍しく再訪したくなるラーメンだった。
とはいえ、よく考えたらチャーシューと紅生姜を味わった印象が中心である。もしその2つが無かったら美味しいと思えたかどうかはビミョーだ。結局私はチャーシューだけを目的にラーメンを食べている可能性がある。
わが家からほど近い距離に「駄目な隣人」という名の有名ラーメン店がある。いつも行列ができているので気になっていた。ある日、ウーバーイーツで10分程度で運んできてくれることを知ったので注文してみた。
もちろん、出前で食べただけで評価してはいけないのだが、わが家に届いたつけ麺は麺が固まっちゃってタレの味もとくに感心するほどでもなく半分も食べずに捨ててしまった。お店で食べたらもっとマトモだろうが果たして並んでまで食べたい味なのだろうか。
そもそも「つけ麺」という存在が何となくシックリこない。昔の人間だからだろうか、どことなく中途半端な印象が消えない。
その昔、東池袋で一世を風靡した大勝軒のつけ麺を初めて食べた時に「ウマいのかマズいのかどっちとも言えない不思議な味」に違和感を覚えた原体験が今もつけ麺を前にすると甦ってしまう。
こちらはアチコチで見かける「東京油組」というチェーン店の油そばである。つけ麺の応用系というか変形みたいな食べ物である。以前、娘に連れられて恐る恐る食べてみたのが初体験だった。
名称のイメージよりはあっさりしているし、香港あたりの汁なしあえ麺的な料理の一種みたいな感じだ。個人的にはつけ麺よりはシックリくる。半熟卵を混ぜたら結構ウットリする味になる。
かといって頻繁に食べたいかと言われたらノーだ。先日食べたのも過去10年で3回目である。思い込みのせいか、食べ終わった後に「ケッタイなものを食べちゃったな」という保守系古典オヤジ特有の感想がついつい頭をよぎってしまう。
つけ麺、まぜ麺それぞれのファンの人には申しわけないのだが、そっち系のラーメンをシャバダバだと思ってしまう決定的な要因は温度だと思う。熱いのか冷たいのかハッキリせず中途半端に「ヌルい」感じが何となく嬉しくない。
私は猫舌のくせにヌルい感じをつい否定したくなる。「ラーメンって熱くてハフハフだろ?」という先入観が邪魔をしてそうじゃないラーメンを色眼鏡で見てしまうようだ。
何だかんだ言って、しょっちゅう食べてもいいと思えるのは喜多方ラーメン「坂内」のヤケっぱちみたいなチャーシュー麺と、ソーキをぶりぶり追加した沖縄そばぐらいである。沖縄そばはラーメンとは呼ばないか…。
結局、麺より豚肉をどっさり食べたいというのが私にとってのラーメン道みたいだ。ラーメンを真摯に研究している人には何とも申しわけないズレまくった結論になってしまった。