四半世紀近くにわたって活字商売をしていると、活字が及ぼす影響の大きさを思い知らされることも多い。
紙にそれっぽく活字で印刷されていると、執筆した人間の意思を超えて、意外な場面で意外な解釈なんかをされてしまうこともある。
紙だけでなく、最近ではネットの世界も同様だろう。レイアウト、見せ方がそれっぽく整っていると、闇雲にその情報を受け止めてしまったりする。
このサイト、ちょっと覗いていただきたい。
http://kyoko-np.net/2011081501.html
次のNHK大河ドラマの内容に関する「報道」だ。報道記事っぽく体裁が整えられていると信じちゃう人もいる。
私にこのサイトを教えてくれた人も素直に記事内容を信じたらしい。活字の威力おそるべしだ。
なんでこんなことを書き始めたかというと、ひょんなことで私が書いたブログの内容が一部に迷惑をかけてしまったようなので自戒と反省をせねばと思ったからだ。
7月にパリで靴を買いまくった際に、イタリアの名門・タニノクリスチーが廃業間近だという内容を書いた。あくまで現地の店員からの伝聞で、断定した記述をしたわけではないが、見る人が見れば気になる話だろう。
こんな感じだ。
http://tanino.ldblog.jp/archives/2988325.html
結論的にはグレーな部分もあるみたいだが、人騒がせだったことは確かだ。反省します。
ということで話題を変える。
活字商売をしてきたうえで、思い返せば、そこそこトラブルにもぶつかった。現場にいた頃は、記事内容に関する抗議やクレームも随分受けた。馴れない頃は胃が痛くなったが、馴れてしまうと日常的な業務のひとつみたいになった。
純粋な間違いなら素直に詫びて訂正することが肝心だし、意見の違いや、立場の違いによる食い違いなら双方で前向きに議論するしかない。
なかには一方的に強硬な抗議を繰り広げる人や団体もあるから困る。1枚に一文字づつ講義内容を書いた紙を何十枚も延々とFAXされたこともあるし、そりゃないぜって言いたくなる脅しをネチネチやられたこともある。
「注射一本でラクにしてやろうか、こら!」って言われたこともある。反則だろう。そういう言い方をされるとさすがにビビる。
面白いもので、誠実に対応しようとすると、相手をオチョくるつもりは全然無いのだが、「僕は注射が苦手なんですよ」とか答えて相手を一層怒らせてしまったりした。
ある時は、甲子園の21世紀枠での出場校を批判的に取り上げたら、猛烈な抗議を受けた。その地域でわが社の商品の不買運動をすると某団体から大真面目に言われた。
高校生のクラブ活動とはいえ、予選を勝ち抜いて出場権を得るのがルールであって、本来出られないはずの高校が得意になって出場するのは違和感があるという内容の話を書いた。
あくまで勝ち負けを知ることも教育上大切なことだという趣旨だったのだが、怒ってしまった人々を納得させるのはなかなか難しい。
近頃の小学生の運動会では、徒競走も優劣を決めずに最後はみんなで手をつないでゴールするというバカげた話もある。そういう不気味な横並びの弊害と優勝劣敗の原則を教えることも大事だろうと書いたのだが、話が全然かみ合わなかった。
別な時には、法律上の大きなトピックをすっぱ抜いた形になって、某中央省庁と大モメになったこともある。魑魅魍魎の集団だけにあの手この手でいたぶられた。
で、結局、最後は霞ヶ関に呼ばれた。威圧感丸出しの局長室に入り、どんな展開になるのかと力んで待機していたら意外な展開。
局長サマから直々に、こちらの報道内容の正しさを確認され、その後の向こうの対応について謝罪を受けた。
一見、こう書くと、さぞこっちの正義が勝ったみたいな印象を与えそうだが、実はそんな格好良い話ではない。実は相手の思うツボだったりする。
肩に力を入れてその場に臨場したのに、予想外にこっちがニッコリしちゃう対応をされた場合、人間の心理ってどうなるだろうか。
答えは簡単。安堵したついでに簡単にほだされます。ほだされちゃったら、その後は無意識のうちに相手側にトンがった対応が出来にくくなる。いわば懐柔策にはまっちゃうという流れ。
日本の官僚機構が記者クラブ制度を上手に使ってウルサイはずのマスコミを囲い込んできたのは、結局はそういう「人たらし」みたいな懐柔策の積み上げなんだろう。
野田新首相が財務省の操り人形とか言われるように、政治家が役所の代弁者になってしまうのも結局、巧妙な人たらしの成せるワザだろう。
どうせなら私も他人に対して「人たらし」の能力が発揮できる人になってみたい。得意技に出来たら色々と楽しそうだ。
そうはいっても「女たらし」ですらうまく行かないのだから、なかなかハードルは高そうだ。
2011年9月2日金曜日
活字の影響 人たらし
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3 件のコメント:
はじめまして
お心遣いありがとうございます アクセスが急に増えたので調べるとこちらからでした
そんなつもりはないのですが自分の記事には批判的なニュアンスがありますね カンジ悪いので手直ししました
富豪記者さんの文章は歯切れよくてわかりやすいです お手本にさせていただきます
あとこれは余計なおせっかいかもしれませんが私の記事へのリンクは個別記事のURLでないと意味が通じなくなってしまいます 現状のリンクはトップページですので最新の記事につながることになります
個別記事のURLは記事のタイトルをクリックすると呼び出すことができます
mituruさま
わざわざありがとうございます。
タニノ、廃業話がガゼであれば何よりです。
お騒がせしました!
やはり記事に書かれている通りでした
申し訳ありません
再建案も難航している様子です
話がまとまっても靴は変わってしまうでしょうし…
おかげさまで助かりました
ありがとうございます
また何かわかったら教えてください
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