2013年5月8日水曜日

インドネシア・レンベ ヘンテコ魚の旅


ゴールデンウィークはインドネシアのスラウェシ島に行ってきた。目的地はメナド(マナド)とレンベだ。

18年前にメナドに行った際には、海の美しさに感動して絶対にまた来ようと思った。ところがその旅の帰路、乗り継ぎの関係で一泊したバリ島に魅せられて、その後はバリ通いばかりで、気付けば18年も経ってしまった。

昔から世界中のダイバーを魅了するメナド周辺の海だが、ここ10年ほどの間に、車で2時間ほど移動したレンベ(LEMBEH)エリアの海の面白さも注目されるようになった。

メナド周辺の海は、抜群の透明度とダイナミックな地形や豊富なサンゴが特徴だ。対するレンベは、一見何もない泥地のような場所に珍しいヘンテコな魚が多く生息していることが特徴。

どうせならメナドとレンベと両方潜ってこようと企んで旅を計画。シンガポールまでマイレージの無料特典で飛んで、そこから空路3時間半ほどでメナド空港入り。まずはレンベを目指す。


周辺には今や10件以上のダイバー用のリゾートがある。リゾートと言っても辺鄙な場所だから、「潜る・食べる・寝る」だけを満たす簡素なものが中心。

私が選んだのは「DIVERS LODGE LEMBEH」という民宿のような宿。お客さんごとにボートも水中ガイドも貸し切りで遊ばせてくれるシステムに惹かれて選んだ。

日本人はあまり来ないようだが、日本語ぺらぺらのポーランド人マネージャーのおかげで滞在に不便はなかった。



エアコンはなかったが大きな天井ファンのせいでまあまあ快適に過ごせた。温水シャワーはしっかり出るし、コテージ自体も清潔だった。ベランダからのジャングルの眺めが気持ち良かった。

毎朝5時頃にはけたたましい鳥の合唱で目覚めてしまう毎日だが、朝早くから潜りまくったので実に規則正しく原始的な時間が過ごせた。



食事は泊まっているゲストが一堂に会して決まった時間に食べる。味の方は論評不能なレベルで、持参した「大人のふりかけ」と「中濃ソース」が活躍した。

さて水中に話題を移す。一言で表現すればヘンテコな海だった。目のいい現地人ガイドがいなければ、何も無い泥地や砂地を延々さまようなポイントが多かった。

ガイドさんのおかげでヘンテコな魚がゴロゴロ見つかる。「前世でよほど悪いことをしたヤツの生まれ変わり」みたいな風貌の魚がワンサカいた。

画像をクリックすると拡大表示されるで是非大きなサイズで見てやってください。





世界中から水中写真好きなダイバーが集うだけあって、1回あたり1時間以上潜っていても飽きない。

黒紫色のツマグロオコゼという魚も他の海では見られただけで大喜びするのだが、ここではゴロゴロいる。そのうち見向きもしなくなるほど観察できた。

変な色のハナイカも瞬時に色彩を変えてヘンテコな姿を見せてくれた。黄色い身体に目の色がルビーみたいな魚はツノカサゴの一種だろうか、これまたヘンテコである。

その昔、NHKスペシャルでも特集された変身するタコであるミミックオクトパスに似たワンダーパスにも出会えた。とっとと泳いで逃げればいいのに、随分といろんな擬態を見せてくれた。

どちらかといえば、透明度の高い気持ちよい環境に身を置いて綺麗な写真を撮影したい私ですら結構興奮したのだから、スーパーおたくレベルのダイバーだったら狂喜乱舞する海なのだろう。

今回の旅の最大の目的が「毛むくじゃらヘンテコ魚」を撮影することだった。以前から一度は出会ってみたかった「ヘアリーフロッグフィッシュ」がそのターゲット。全長30センチぐらいのイメージ通りのヘンテコな個体に会えたので、40分ぐらいずっとヤツに張り付いて撮影した。







いやあ、実にヘンテコである。カエルアンコウという種類の魚なのだが、あんまりな風貌である。神様も不公平だと思う。数え切れないほどの魚の中でここまでヘンテコな姿形にされてしまうとは実に気の毒である。

目の前を小魚が泳いでいる写真があるが、その小魚もヘアリーフロッグフィッシュの存在に全く気付かず、私の目の前でいとも簡単にパクッと食われていた。

長年のダイビング経験では綺麗な魚をさんざん見てきたが、最近はヘンテコ魚の哀愁みたいな空気にとても魅せられる。「美人は三日で飽きるけど…」みたいな感覚だろうか。

間近で見られただけでなく飽きるほど撮影できたので、東京から2日がかりで出かけた苦労など吹っ飛ぶ思いだった。今まで見た魚のうちで「大興奮ベスト5」に余裕でランクインだ。

ヘンテコ魚は他にも色々転がっていた。



イッポンテグリとセミホウボウだ。すごく希少性があるわけではないが、レンベの海ではごくごく簡単に出会える。やはりヘンテコである。こいつらも前世で何か悪いことをしたのかもしれない。



これまた気色悪いオコゼの仲間とアンボンスコーピオンフィッシュだ。やはり「前世で悪いことした組」だと思われる。

こうやって画像を並べるとヘンテコだし、不気味すぎる。自分の趣味がどこか異常ではないかと心配したくなる。



人の指と一緒に移したピンぼけの一枚は、ここの海の固有種であるレンベシーホースだとか。その下の画像は、外敵から身を守るためにウニを背負って暮らしているヘンテコなカニだ。

あまりに地味で不気味な魚ばかりなので、少しは色のついた魚の画像も載せておこう。



水中に落ちている空き瓶に下半身を突っ込んでいるのはギンポの仲間。真っ黄色のヘンテコはカエルアンコウ。さきほどの毛むくじゃらヘアリーフロッグフィッシュの毛の無いバージョンということになる。

カエルアンコウは、以前は「イザリウオ」と呼ばれており、昭和ダイバーとしてはそっちの呼び方がピンとくるのだが、差別用語という理由で改称された経緯がある。

今回は、そうしたカエルアンコウをいっぱい目撃したのだが、ジャイアントフロッグフィッシュと呼ばれる50センチほどもある巨大なカエルアンコウが珍しく泳ぎまくっている姿にも遭遇できた。



普段はドテッと周囲に溶け込んでボーッとしているのだが、このときは私のストロボの光を嫌ったのか、悠然と泳ぎだした。しばし周辺を泳ぎまくって陣地に戻ってきたのだが、大口を開けながらスイスイ泳ぐ姿はなかなかユーモラスで笑えた。

今日はヘンテコ魚をさんざん紹介したので長くなってしまった。メナド側に移動してきらめく透明度の壮観なブナケン島で潜った話は次回に紹介しようと思う。

ここから先はレンベで撮影したその他の画像を載せておきます。











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