なんとなく普段と違う場所で誕生日を迎えたくて、貯まっているマイルをフル活用してスペインに行ってきた。
以前から行きたかったトレドが目的地。「スペインで1日しか無いのなら迷わずトレドに行け」と言われている場所だ。
実際に行ってみた感想もまったくその通り。朝も昼も夕方も夜もすべて魅力的だった。
ヨーロッパのあちこちで「中世を思わせる街」に出会うが、トレドの場合「中世で歩みを止めた街」という表現がぴったりくる。
迷路のように入り組んだ路地をあてもなくさまよってみた。ひたすら散歩だ。時々は教会も覗いたりしたが、それ以外は黙々と歩いた。足はパンパンになったが実に楽しい時間だった。
スマホに搭載されている位置情報を表示する機能が散歩のサポートをしてくれた。あれがなかったら細い路地ばかりで方向がわからず発狂したはずである。
宿は「Parador de Toledo」。パラドールとは、スペイン各地に存在する国営のホテルだ。古い時代の建物をリノベーションした世界遺産大国スペインならではの宿である。
トレドのパラドールは市街中心地からタクシーで10分ほど離れた高台にある。美しく浮かぶように見える街全体の姿を眺めることで人気がある。
エル・グレコが描いたままの絶景がいながらにして楽しめるのがウリである。
今回、トレドには2泊したのだが、当初はパラドールが一泊しか確保できず、もう一泊は市街地のホテルを手配していた。
ところが、旅行に出てから2日目、マドリッド滞在中にインターネットでしつこく空室をチェックしていたら一室だけ空きが出たようで、慌てて確保した。スマホさまさま!である。
ここに泊まる利点は「絶景24時間体制」に尽きる。朝日に輝く街、夕陽に色づく街、夜のあかりが灯る街。時間帯ごとに堪能できる。
部屋はムダにスペースが広いJr.スイートだったのだが上位カテゴリーの割には部屋からの眺めは大したことなかったのが残念。
でも、部屋から近いカフェから続く展望テラスからの絶景が圧倒的だったのでいつもそこで葉巻をふかしていた。
画像はすべて同じ展望テラスから撮影した。一眼や高機能コンデジも持参したが、スマホのカメラが一番良く撮れた。
朝に昼に夜にこの景色を見ながら「人生50年」に思いを馳せた。実際に覚えているのは40年ちょっとか。いや、都合の悪い過去をずいぶん記憶から完全消去しているので35年分ぐらいだろうか。
なんじゃそりゃ。
まあいいや。一応そんな気分になってみた。そして沈思黙考を重ねて導き出された結論は「もっと感動しよう」である。
歳とともに感動する心は弱くなっていく。達観もするし、分別顔もクセになる。もったいないことである。何事においても新鮮な気持ちで大袈裟なぐらい感動したほうが人生が明るくなる気がする。
旅先で目に飛び込んでくる景色、映画や本はもちろん、小さなことでも自分の心が動いたらガンガン感動しようと思った。
実践できるかどうかは今後の行動次第だが、そんな気持ちになれたことは今回の旅の収穫だ。
トレドへはマドリッドから特急電車で向かう。ラマンチャ地方ならではの荒涼な大地が見えてきたら到着である。わずか40分弱。近すぎて拍子抜けするほど。
ぐちゃぐちゃした大都会マドリッドからすぐに着いてしまうわりにはトレドでは喧騒を感じない。時折響く鐘の音が古都ならではの風情を強く感じさせる。
団体旅行の集団と遭遇する時以外はいたってのどかな時間が流れる。日帰り観光客が多いせいで、夕方以降は特に静かだ。
私の場合、散歩に疲れた時や、街並みの撮影のタイミングに合わせて頻繁に中心地と宿をタクシーで移動した。どの道を通っても目に入るすべてが「トレド的」である。タクシーで移動するたびに目に入る景色も飽きることなく眺めた。
美食の国といえども、世界的な観光地だけに、インチキみたいなレストランも多いみたいだ。
この画像、実はぜんぶマズかった。トレドの名物ウズラは臭みがあったし、豚の煮込みはあり得ないほど固く、パエリアは作りおきをチンしたとしか思えないヌルさと味わい。そんな店を選んでしまった自分を呪った。
で、次の日の夕飯はマトモな店に行ってマトモなモノを食べた。残念ながら店の名前を忘れてしまった。
実はこの日、日本時間では一応私のバースデーディナーである。さすがにインチキパエリアはゴメンだ。
名物のウズラ料理は少し酸味を効かせたソースの味が日本人の味覚にもバッチリだった。野鳥ならではの肉質と風味の良さが印象的だった。
こちらは牛テールの煮込み。見た目よりあっさりしていて白ワインにも合う感じ。ホロホロとろとろの食感でかなりのボリュームだったが飽きずにワシワシ食べられた。
それにしても、田舎のスペイン人の英語力のメロメロぶりには驚かされた。
英語なんてまるで苦手で常に勢いと勝手な想像だけで会話を成立させている自分がペラペラの達人じゃないかと錯覚したほどだった。
次回は「知らなきゃ良かったファーストクラス体験」を書きます。
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