食べる行為は大きく二つに分かれる。「楽しむ食事」と「生きるための食事」だ。
純粋にプロの技を楽しんだり、酒との取り合わせを楽しむ場合など、その時間をじっくり堪能するのが前者だ。後者は単に生きるためにエサ?のように食べ物を口にするパターンである。
コンビニでおにぎりを買って移動中にせわしなく食べたり、カップ麺でちょちょっと済ますような「生きるための食事」であれば、ほんの5分もあれば終了である。
5分で済んじゃう食事はさすがに寂しい。というわけで、今日は「独り者が外食する場合の食事に要する時間」を考えてみたい。
「早メシ早グソ、芸のうち」という格言がある。要はダラダラと食事をすることを暗にいましめているわけだ。
「長っ尻」(ながっちり)という言葉もある。一般的に店屋でいつまでも帰らない迷惑な客を指す。
いずれにしても「ダラダラ食い」は格好悪いというのが世間の常識である。
ここが悩ましいところである。酒を楽しみながらアレコレとウマいものを楽しむと結構な時間が必要になる。
とくに「おひとりさまディナー」の場合、あまりせわしないと何となく世間からの疎外感を感じる。考えすぎか。
ランチじゃあるまいし、ディナータイムにざる蕎麦やドンブリ飯をかっこんで終わりというパターンだと何となく損した気分になる。1日の終わりを祝して小鉢や小皿なんかも並べたくなる。
江戸のファストフードだった寿司なんかも、とっとと食べてサっと帰るのがイキなのだが、私の場合、“夜寿司”はいつも長丁場になってしまう。悪いクセである。
ヘタすると2時間コースだ。さすがに長い。最後のほうは酔っているだけ。せめて1時間半、なるべく1時間ぐらいで済まそうと思っているのだが、気付けば長っ尻である。
プチ常連ぐらいの店なら1時間路線を実践できるのだが、昔から顔を出している店だと無駄話に花を咲かせて長居してしまう。
そんなダラダラ系ヤボ客である私だが、その日の気分によっては「食事を楽しみたいけど、長っ尻はしないでさっさと終わらせたい」という相反する問題にぶつかる。
そういう日はだいたい連日の酒に疲れている時だ。だから酒が二の次になるし、長く腰を落ち着けるのも避けたい。
洋食屋、トンカツ屋あたりの出番である。寿司屋、焼鳥屋、おでん屋あたりだとどうしても酒をダラダラ飲むパターンに陥る。
そんな気分の時に出かけることが多いのが銀座の煉瓦亭だ。銀座だと食事のあとにネオン街に吸い寄せられそうだが、煉瓦亭は3丁目だから安心?である。
私にとっての魔界は7丁目と8丁目だ。酒は二の次でササっとウマいものを食べたい時なら、3丁目から魔界に遠征しちゃうリスクは低くなる。
この店の良いところは「仰々しくない気軽な雰囲気」である。かといって昭和レトロの独特な風情がタダモノではない雰囲気を醸し出す。値段も手頃で味も正統派。画像はエビマカロニグラタン。
ビールの中瓶を1本、その後にグラスワインを一杯。アルコールはその程度でクリームコロッケとかハヤシライスを頬張れば、1日のシメにうってつけだと思う。
こちらは上野御徒町にあるトンカツの名店「ぽん多本家」のカツレツ。ツマミメニューがあるわけではないので、ここでも瓶ビール1本に酒1合ぐらいでアッサリ引き上げる。
ダラダラ飲んで長っ尻になりがちな私にとって、こうした店は一種のリハビリ?作用がある。サッと食ってサッと帰る。野暮天にならないために大事な心掛けだ。
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