2019年10月28日月曜日

新三浦の水炊き


アッという間に涼しくなった。夜は薄ら寒い時もある。こうなると鍋が恋しくなる。熱燗も恋しくなる。

鍋料理の問題点は野菜がエラそうに登場する点だ。野菜嫌いにとっては有難くもなんともない。

私がこの世で一番好きな鍋が野菜をいっさい無視した水炊きである。白濁スープを楽しむには野菜は邪魔である。

昔から時々出かける新宿「玄海」などは野菜類はコースの中で提供し、鍋は白濁スープと鶏肉以外は何も入っていない。素晴らしく潔い。


すっかり新宿が遠くなった私としては今の職場や住まいから程近い距離で水炊きのウマい店を開拓しないといけない。

というわけで、初めて訪ねたのが築地にある「新三浦」である。築地というと旧魚市場周辺をイメージするが、わが家がある新富町側の中央区役所や築地警察署界隈も結構な数の飲食店が揃っている。

鰻の老舗「宮川本廛」もそのあたりにあって、そこから徒歩20歩ぐらいの距離に「新三浦」がある。

7階だか8階のビル全部が店舗だ。すべて個室らしい。秘め事デート?なんかにも使い勝手が良い。




ここの水炊きも当然のように白濁スープがウリである。だから鶏肉と一緒に野菜をゴッタ煮にするような悪趣味ではなかった点が嬉しい。

スープは新宿「玄海」のそれと比べればスッキリ系だ。最初はちょっと物足りないようにも思えたが、スープだけをお代りしているうちに、優しく滋味深い味にジンワリできた。



野菜は一通り鶏肉を食べたあとに準備されるのでパスしちゃうことも可能だ。個人的には実に正しいやり方だと思う。

同行者が野菜好きだったら、まずスープや鶏を堪能し、おまけに両方ちょっとづつ追加して、それでもなお野菜なんぞが食べたければその時点で鍋を明け渡せば良いわけである。

「食事の時は野菜を先に食べれば太らない」などとオマジナイみたいなことを真剣に語る人は多いが、そういう人には向かない。

白濁スープと鶏肉だけで、あとは酒と珍味が1,2品あれば私は充分幸せなのだが、たいていの水炊き屋さんはコースが基本だからそうもいかない。





前菜、つくね焼き、唐揚げである。どれも美味しいが、水炊きの前にお腹いっぱいになりそうだから要注意である。

それにしても唐揚げが絶品だった。水炊き気分だったのに唐揚げだけ大量に注文してハイボールをガバガバ飲みたい気分にさえなった。

そんな浮気心は押さえて、今シーズン初めてのヒレ酒を注文する。アッチッチと口をすぼめながら季節が変わったことを実感する。



日本食は世界遺産になっているようだが、ヒレ酒の素晴らしさはそんなニッポン名物の中でも卓越した存在だと思う。

あの香り、ふくよかな味わい、まさに日本の宝だと思う。同じ日本に生まれたとしても、大昔の飢饉の頃や戦国時代に生きていたら、こんな素晴らしい楽しみ方はあり得なかったわけだから現代人は宝くじに当たったようなものだと思う。



そしてシメは雑炊である。これまたニッポンの宝だ。シンプルだけど旨味たっぷり。ジュワーンと心の底まで癒された感じだった。

ハッピーなひとときだった。



0 件のコメント: