2023年8月18日金曜日

洋食探検


明日地球が滅亡するとしたら最後に食べたいものは何か。私の答えはトンカツである。

 

トンカツはさも日本料理みたいな雰囲気だが、元を正せばいわゆる「ニッポンの洋食」の代表メニューだ。西洋料理を日本式にアレンジして進化した食べ物がトンカツだ。

 

ニッポンの洋食といえばオムライス、ハヤシライスを始めデミグラスソース系、ベシャメルソース系の逸品達が顔を揃える。揚げ物はポークカツレツ、ビーフカツレツ、メンチカツ、クリームコロッケ、エビフライ等々。全て私の大好物だらけだ。

 

洋食大好きオヤジとして今まで随分と名店と言われる店を訪ねてきた。20代の頃はデートといえば麻布のグリル満天星ばかりだったし、亡き祖父が好きだった根岸の香味屋にも片道1時間かけて行った。赤坂・津つ井のステーキ丼を予算が足りなくて断念したこともあった。

 

30代、40代も過ぎアッという間に50代になったが今も洋食を愛する気持ちは普遍だ。銀座日本橋界隈の「みかわや」「資生堂パーラー」「南蛮銀圓亭」「煉瓦亭」、「スイス」、「たいめいけん」、浅草の「グリルグランド」「よしかみ」「ぱいち」、上野湯島の「さくらい」「黒船亭」や、他にもいろんな店でドカ食いを続けてきた。

 

やはりそれなりの名の遠った店ならハズレはない。上に列挙したお店の中には強烈なインパクトがあったところもあれば、まあまあのところもあったが、どの店も総じて満足感に浸れる。

 

これは私の持論なのだが、ニッポンの洋食と呼ばれる老舗の名店が出す料理は「東京の郷土料理」だと感じる。文明開化で必至に西洋のマネをしていた時代、首都である東京がハイカラな洋食を磨き上げていったのは間違いない。

 

ついつい行ったことがあるお店を訪ねがちだが、まだまだ未開拓のお店も多い。先日ようやく訪ねてみたのが人形町にある「芳味亭」だ。こちらも古くから有名な洋食の老舗だ。

 




何年か前に建て替えたという店内はなかなか素敵な居心地の良い空間だった。堅苦しいほどではなく適度に重厚感もあって接待やデートにも使えそうだ。

 

アレコレ食べてみたのだが全体に丁寧に仕上げられている印象。価格的にカジュアル路線の洋食屋さんだともろもろ雑な感じが残念だが、こちらは丁寧さがウリだと感じた。

 





コース料理といくつか単品も注文したのだが、すべて標準以上の味わい。洋食マニアなら納得の味が揃っていた。個人的にはもう少しメニューにバリエーションを求めたいところだが、よほどの大食漢じゃない限り問題はないレベルだ。

 

昔から気になっていたお店なのにナゼか縁がなくて今になって初訪問したわけだが、気付けば自宅から徒歩で行ける距離である。今後はマメに通ってみたいと思った。

 

別な日、これまた以前から気になっていた日本橋の「レストラン東洋」に行ってみた。こちらは大衆路線の昔ながらの気軽なレストランという雰囲気。昭和を感じさせる入口前のショーケースがオジサマ心をくすぐる。

 



夜は居酒屋的に運営しているようで、悪くいえば「洋食屋の迷走」とも言えるが、肩肘張らずに酒を飲みながら洋食を突っつくという憩いの時間が過ごせる。

 

店内の風景は昭和のデパートのレストランみたいなベタな感じ。中高年以降の人なら落ち着く雰囲気かもしれない。

 

もろキュウ、梅水晶、もずく酢や塩辛といった居酒屋定番メニューも用意されている。もはや洋食屋さんとは呼べない迷走ぶりだが、それはそれで酒を飲みたい気分なら有難い迷走である。居酒屋の定番つまみでグビグビ飲んでから王道の洋食メニューを頼めちゃうわけだから割り切ってしまえばかなり楽しい店だと思う。

 





ポーク、サーモン、海老のフライ盛り合わせ、ドイツ風ライス、謎の焼きそばである。フライ盛り合わせは揚げ加減もキチンとしていて何よりタルタルソースの量と味が洋食屋の矜持を示しているようで良かった。

 

ドイツ風ライスという謎の食べ物は、いわばデミソースたっぷりのオムライスである。意味不明なネーミングが最高である。謎の焼きそばはその名も「スパゲッティー焼きそば」である。パスタ麺で作る焼きそばである。ヤケっぱちみたいな一品だが案外ウマかった。

 

他にもハヤシライスやシチューやグラタンなど定番洋食メニューが揃っているわけだから、梅水晶と冷奴で酒を飲んでからそうした洋食メニューでシメるという有りそうで無い宴が楽しめるわけだ。

 

それぞれの食べ物がちゃんとした味わいだからこういう迷走も悪くない。職場からも遠くないし、こちらもリピートしたくなる。シャレた店が増殖している日本橋にあって中高年男性にはオアシスみたいな場所だと感じた。

 

 

 

 

 

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