史上初のホームランと盗塁の「50・50」に向かって突き進むのが大谷翔平サマである。野球を好きになって半世紀が経つが彼をこの目で目撃できたことは幸運としかいえない。
誰も指摘しないが、彼はいま「リハビリ中のピッチャー」である。肘の手術を受けて来年に復活登板するためにリハビリに励んでいる。そんな選手が打者として「50・50」を成し遂げそうだから驚天動地としか言いようがない。
野球肘を修復するトミージョン手術を終えたピッチャーのリハビリはかなり過酷だという。翔平さんにはそんな常識も通用しないからビックリである。
かつて巨人のエースだった桑田投手はリハビリ中に黙々と走り続けたことが知られている。同じ場所を走り続けたせいで練習場の芝生が剥げてしまい「桑田ロード」と名付けられたほどだった。
いま思えば打撃も守備も抜群に上手だった桑田選手もリハビリ中にピッチャー以外で試合に出たら面白かっただろう。そんな妄想をするぐらいリハビリ中のピッチャーが別の役割で大活躍していることは異次元の世界の話だ。
翔平さんはあの巨体を軽々と走らせて悠々と盗塁を成功させる。一般に盗塁巧者といえば昔の阪急・福本や今のソフトバンク・周東のように身体は細めでホームランには無縁の選手ばかりだ。
翔平さんは並み居る巨漢メジャーリーガーよりもデカいホームランをかっ飛ばすのにバンバン走れちゃうからこれまた異次元である。
盗塁成功率は92%を超えているそうだ。闇雲に走っているわけではなく高い技術と洞察力あってのことだろう。野球センスは今風にいえば鬼レベルである。翔平さんが走るたびにくれぐれもケガだけはしないように祈っているのは私だけではないだろう。
打点の多さも特筆モノである。打順が3番4番ならランナーを置いて打席に入る確率が高いわけだが、翔平さんは1番バッターである。1番バッターがシーズン終盤の今になって打点王争いをしていることも超絶的な話である。
ついでにいえば、愛犬に始球式をやらせるという無謀な企画まで完璧に成功させちゃうあたりも、いわゆる「持っている」という強運ぶりの上をいく凄味と言える。スターとスーパースターとの差はそんなところにも確実に存在するのだと痛感した。
これまたついでの話だが、今シーズンの始めには「イッペー事件」があったことも忘れてはならない。あれだけの事件に巻き込まれたら普通の人間は正常な精神状態ではいられない。翔平さんはアノ事件をすっかり大昔の話だったかのようにどこ吹く風とばかりにバリバリ活躍している。驚嘆するしかない。
メンタルお化けと呼ぶにふさわしい超人ぶりだと思う。
野球に興味のない人にとっては連日報道される翔平さんの話題はウンザリだろう。まさに大谷ハラスメントである。大谷ファンの一人としてその点はお気の毒だと思う。素直にごめんなさいと言いたくなる。
でも野球好きや野球に関心がある人にとっては既に好き嫌いを超越した存在になっている。野球好きの中には翔平さんのアンチが存在しない。そう断言しちゃうほどのポジションまでたどり着いていると思う。反論もあろうが「王・長嶋を超えた」とさえ感じる。
個人的に注目しているのは来年の活躍だ。リハビリも順調そうで来年は「投手大谷」が復活する。一般的にトミージョン手術あけのピッチャーは球速が上がると言われる。翔平さんははたしてどうなるだろう。
日本人の最速記録は翔平さんと佐々木朗希が記録した165キロである。手術明けに復調したらそれを超えてくる可能性もある。大いに注目だ。
ちなみにメジャーリーグの最速記録は怪物左腕・チャプマンの169キロである。異次元男である翔平さんならひょっとすると170キロを投げちゃうかもしれない。「そんなバカな!」を今までも成し遂げてきたわけだから案外あり得る話かもしれない。
複数回のトミージョン手術を受けると投手寿命は短くなるのが相場だ。投手大谷もそう考えると年齢的にも来年から2~3年で限界が来るのだろうか。だとしたら来年、再来年あたりの剛腕ぶりをしっかり目に焼き付けたいところだ。
かつてイチローが引退会見の席上で「翔平はホームラン王とサイヤング賞を交互に取るぐらいの選手にならないといけない」と語ったことを覚えている。その頃の翔平さんはまだ今のようなスーパースターレベルではなかったから単なる夢物語にしか聞こえなかった。
気づけばあれから5年半が過ぎた。夢物語だった話が確実に現実に近づいていることにただただ驚いている。
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