2012年2月3日金曜日

銀座 おかやす

和服姿の綺麗なおかみさんがいて、カウンターの中では寡黙な板さんが丁寧に料理を作る。場所は銀座の片隅、こじんまりとカウンターが中心で、客の年齢層は高め。肩肘張らずに、ゆるりと一献傾ける―。

そんな店には頻繁に通いたい。というか、そんな店ってなかなか巡り会わない。有りそうで見つからないのが実情だろう。

と、書いてみたが、そういうイメージ通りの店も探せばある。今日はそんな話。

銀座7丁目、数寄屋通りの古い雑居ビルの5階に佇む「おかやす」がその店。


一昨年だったか、銀座に勤める女性に連れて行かれたのがきっかけで、ちょくちょく顔を出すようになった。

男同士でも女性連れだろうと、少人数ならどういう場面にもマッチする店だ。「おひとりさま」で過ごすのが好きな偏屈な私にとっては、ひとりのんびりカウンターでチビチビやるのもオツなもの。

新橋の芸者さん出身のおかみさんが開いたこの店、今のご時勢の中、着々とお客さんを増やし、時には満席で入れないこともある。

一人気ままに止まり木で酔いたい時は、どうしても和食を選ぶ。ワインバーなんてガラでもないし、スペインバルだって大勢でワイワイするための店だろう。

正当な日本料理なり懐石料理は面倒だし、寿司屋は生の魚中心だし、焼鳥屋さんは鶏肉ばっかり、おでん屋はおでんばっかり、居酒屋は落ち着かない。

飲食店選びをする上では当たり前の話なのだが、どれも気が乗らない時だって多い。

銀座あたりでゆるりと時間を過ごしたい時に、腹は減ったが、専門店に行く気分ではないことだってある。どの店に足を運ぶかは時に難問。そんなときに重宝するのがこの「おかやす」だ。


この店のメニューは懐が深い。酒の肴になりそうなものが揃っている。刺身に揚げ物、焼物、おでんに加えて、上質な干物もある、珍味もある、時にはビーフシチューとかスープカレーも登場する。

シメには本格的な皿うどんや五島うどん、味が染みこんだ焼きおにぎりも捨てがたい。

何年か前に長崎を旅した際に、「皿うどんにはソースをかける」というローカルルールを知って以来、ソースマンである私は皿うどんに目がない。

銀座でしこたま飲んだ後に電通通り沿いのリンガーハットでソースをジャブジャブかけた皿うどんを頬ばったことも数知れない。

そんな時に見つけた小粋な小料理屋さんで、絶品皿うどんがレギュラーメニューだと知った私の興奮を想像していただきたい。

天の啓示かと思った。

銀座の夜の最後がリンガーハットというのも何だか締まらないし、だいたい零時過ぎに皿うどんを食べては逆流性食道炎を悪化させる。

早い時間に皿うどんでウキウキして、ネオンの海を泳いだ方が理にかなっているし、健康的だ。

なんか「皿うどん賛歌」になってしまった。

この店、決して皿うどんだけがウリではない。キャベツに挽肉とチーズをトッピングしてオーブン焼きにする一品もウマいし、メザシやノドグロの干物もジューシーだ。
ポテトサラダも抜群。


肉豆腐あたりも酒飲みの晩酌を盛り上げてくれる。おでんを常備しているからこその一品だろう。


シラタキとピーマンのピリ辛炒めだって、ピーマンが嫌いな私のために、わざわざピーマンを拾い上げて隅のほうに追いやってくれたこともある。こういうカウンター中心の個人店の良さがイマドキは新鮮だったりする。

おかみさんのテンポも適度にゆるめだ。あまりキチキチ、キビキビされても落ち着かないから、良い加減だと思う。店が空いていれば他愛のない話に付き合ってくれるし、実に居心地が良い。

去年の秋頃だったか東京カレンダーという雑誌に掲載された。お店で掲載誌を見せてもらったのだが、雑誌の路線もあって、大袈裟なぐらいスタイリッシュに扱われていた。それもまた「いとをかし」ではある。実際は肩の凝らない雰囲気だ。

このブログで紹介したところで、混雑に拍車がかかることはないだろうから、誉めまくってしまっているが、お世辞抜きに顔なじみになったら抜群の居心地の店だ。

東京中、こういう店ばかりだったらいいのにと思う。

2 件のコメント:

おかやす県民 さんのコメント...

おかやす、私も行ったことがあります!

富豪記者さんのおっしゃる通りのお店でした。

ただ、その日は友人と二人で飲むと思っていたのですが、その友人が綺麗な女性をお連れになっていて、ちょっと緊張したのを覚えています。

また行ってみたいと思います。

富豪記者 さんのコメント...

県民さま

そんなことがあったんですか?

私も友人とカラオケ行こうとしたら、その友人が突然、女性を集めたときに緊張しました。。。