誕生日
ローソク吹いて
立ちくらみ
こんな切ない川柳ばかりを集めた「シルバー川柳」という本が売れまくっているそうだ。
編者は「全国有料老人ホーム協会」という社団法人。そんなお堅い団体が募集している高齢者をテーマにした川柳の入選作がまとめられている。発行した側もバカ売れ状態にビックリだろう。
目覚ましの
ベルはまだかと
起きて待つ
起きたけど
寝るまでとくに
用もなし
朝っぱらから絶好調である。高齢者のあっけらかんとしたパワーはさすがだ。
万歩計
半分以上
探し物
無農薬
こだわりながら
薬漬け
恋かなと
思っていたら
不整脈
深刻は
情報漏れより
尿の漏れ
妻旅行
おれは入院
ネコホテル
手をつなぐ
昔はデート
今介護
延命は
不要と書いて
医者通い
究極の自虐ネタのオンパレードである。そんなネタで勝負されたら、中年世代には勝ち目がない。でも面白い。
自分自身、ヨレヨレになったときに洒脱な川柳をどしどし生み出せるような明るさと明晰さを持っていたいと心底思った。
この手のクスッと笑える川柳と言えば、もう25年ぐらい前から恒例になっている第一生命による「サラリーマン川柳」だろう。
我が社が発行する新聞のコラム欄でも毎年のように紹介している。私自身、コラムを書く際のネタ枯れの時に助かったこともある。
こちらは高齢者だけが主題ではないので、シルバーとは違った趣がある。
言葉より
別れの予感
絵文字なし
赤い糸
無理に引いたら
切れちゃった
恋人が
いるかと聞かれ
「はい いります」
地球より
俺にやさしく
して欲しい
脱毛に
娘は通う
父悩む
エコな人
昔でいえば
セコい人
風刺がきいて楽しいものが多い。毎年恒例となったことで、入選作にはその年々の話題や著名人ネタが盛り込まれているのも特徴だ。
ダルビッシュ
一球だけで
わが月給
クラス会
あのマドンナが
デラックス
ペと言えば
母はヨンジュン
父加トちゃん
ざっとこんな感じだ。
日本人のDNAに染みついている「五・七・五」調のリズムに合わせた日本語の奥深さを楽しめる。
堅苦しい言い方になるが、俳句や川柳って、日本語の語彙の豊富さや微妙なニュアンス、音感の特徴が混ざり合った文化的遺産といえよう。
それ以外にも、以前このブログでも取り上げたが、「七・七・七・五」の音律数でまとめる都々逸、「五・七・五・七・七」の短歌・狂歌など風流な言葉遊びが楽しめる定型詩がいろいろある。
学校でじっくり教わったわけでもないのに、生活の中で、何か気の利いたことを言おうとすると、こうした音律数が染みついていることに気付く。
わずか十七文字の川柳の世界が、数百文字の駄文より遙かに核心を突く。そんな面白さと奥深さが言葉の魅力なんだと思う。
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