水準以上にウマいお寿司を食べるためにはそれなりの予算を覚悟しないといけないー。私がずーっと信念のように思っていることだ。
先日訪ねた店でそんな信念が覆された。思い込みに縛られていた自分のトンチキぶりを今更ながら痛感した。
探せば手軽で上質なお寿司を食べさせる店はいっぱいあるはずだ。店の立地の問題もあるのだろうが、ちゃんと探せばあるところにはある。
穴子寿司の名店として昔から有名な「乃池」という店がある。場所は谷中。谷中といっても千駄木駅が近い。最近人気の「谷根千」エリアである。
http://www.sushi-noike.com/
昨年から住み始めた文京区の小石川エリアから谷根千方面が案外近いことに気付いてちょくちょく散歩に出かけるようになった。
「乃池」の名前は青年時代から知っていた。土地勘がなく馴染みのない場所だったので行く機会がなかったが、週末の散歩中に発見。店の外で待っている人もいる繁盛ぶりだった。
で、平日の夜ならすんなり入れるだろうとふらっと訪ねてみた。
老舗だの名店だの本物の江戸前だのといった形容詞が付く店は、ピンと張り詰めた空気、コワモテの大将がギロっと客を一瞥するようなイメージがあるが、この店はまったくそんな気配とは無縁だ。
一見でも気楽な気分で座っていられる。お店の人も感じがいいし、昔ながらの真っ当な街場のお寿司屋さんという感じである。
熱めの燗酒で穴子の肝煮と筋子の西京漬けでチビチビ飲み始める。お店に漂う空気は凜とし過ぎることもなく、ゆるゆると五臓六腑が喜びはじめる。
穴子のつまみはタレかワザビを選べるようで、ワサビバージョンを注文。正しくウマい。正統派江戸前の店らしく盛りも多めだ。
店の壁にかかっている短冊を見ると、塩辛やタコのふっくら煮、とこぶしの煮たヤツなどニクい品揃えが揃っている。穴子で有名な店ということは、それ以外の“江戸前仕事系”も期待できそうだ。
ちなみに、高級路線の寿司屋で穴子がマズい店はまず無い。薄っぺらでパサついて冷たくなっちゃったような穴子が出てくるのは、主に住宅街の出前専門の志の低い?店ぐらいである。
イマドキはわざとらしくゆず皮を散らしたような穴子も出てくるが、ああいう余計なことを除けば、一定レベル以上の店の穴子はたいていは美味しい。
私自身、アチコチのお寿司屋さんでウマい穴子はさんざん食べている。名店の誉れ高いこの店の穴子に満足しないはずはない。
ということで、変な言い方だが、穴子には特別な期待はしていなかった。想像通りにウマいはずだ。
それよりも、その他の握り寿司に興味シンシンだった。斬新に仕上げているもののネタは鮮度だけでシャリの味も弱いカッコばかりの?イマドキの握りはではなく、正統派の握りが食べたかったわけだ。
お店のホームページに載っていた握り盛り合わせの画像がどうにもビミョーに感じていたので、正直チョッピリ不安もあった。
銀座・六本木あたりの高い店ではない。手軽な価格帯の店らしい。穴子ばかりが絶品で、その他はごく普通の「手軽なご近所出前寿司レベル」?かもしれないなあなどと考えていたわけだ。
結果は大満足。私の不安など失礼極まりない話だった。逆になぜ穴子寿司ばかり注目されるのか不思議に思ったほど。
まずは穴子の話。冒頭の画像はお店のホームページから拝借した。ウマそうだ。いや、実際に非常にウマかった。私が訪ねた日もツマミの他にこれだけ注文するお客さんもいた。
見た目よりクドさは無く確かにいくらでも食べられそうだ。この日は穴子を2貫食べたが、3~4貫ぐらい食べられそうな感じだ。でも、さすがに穴子ばかりでは面白くない。
ヒラメも鯛も実に加減の良い昆布締め。ジンワリと旨味が口に広がり、燗酒との相性もバッチリだった。
寿司飯もウマかった。やはり寿司というからには正しく酢の味を感じたい。最近は赤酢を使って少し濃い色のシャリを使う店も多いが、色ばかりで味が弱い残念なパターンもある。
もちろん、ネタの味とのバランスを考えて作られているのだろうが、個人的には酸っぱいぐらいの寿司飯が好きだ。
この日、この時期には珍しい生のトリ貝も食べた。こちらも酢で洗った風味が貝そのものの味を引き立てる効果を発揮していてとても美味しかった。
海老やタマゴも正統派路線。タマゴは厚切りか薄切れのどちらがいいかを尋ねてくれた。この日は薄切りを注文。シャリとタマゴの間には、さりげなくおぼろがまぶしてある。こういう老舗っぽい一手間を見ると嬉しくなる。
なんだか関係者かのようにベタ誉めしてしまった。居心地、味、値段それぞれバッチグー!だったから近いうちにまた行こうと思う。
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