しょっちゅう寿司だウナギだと騒いでいる私だが、食べ物のジャンルで何が一番好きかといえば「洋食」だ。
定義付けが厄介だが、簡単に言えば「日本で独自に進化した西洋風の料理」である。クリームコロッケやタンシチュー、オムライスやハヤシライスなどの総称だ。
文明開化メシとでも呼ぶべきジャンルだろうか。都内に洋食屋が1500軒もあった明治後半には「和洋折衷料理」という言葉もポピュラーになったらしい。ご飯に合う西洋風の料理という意味では的確な呼び方だ。
ポークカツレツを元祖にしたトンカツなどは今では日本料理と言ってもいい。ご飯に味噌汁、それに漬け物が不可欠だから洋風イメージではない。店の雰囲気まで民芸調が主流だ。
私の洋食好きは浅草育ちだった祖父の影響も大きい。大正デモクラシーの頃の浅草は日本最先端の街だったから、それこそハイカラな食べものだった洋食への祖父の想いはかなり強かった。
実際に、晩年も根岸の「香味屋」にビフカツを食べに行っていたし、普段から和食より洋食を好んでいた。
さて、コメに合う西洋風の料理といっても、西洋風という言葉自体が今の時代では既に曖昧だ。
大半の人が、椅子の暮らしが基本で洋服を着てベッドで寝ている。着物や畳といった典型的な和の世界以外は、いわば「洋」だ。そういう意味では洋食というジャンル分け自体が賞味期限切れなのかもしれない。
ついでにいえば、沖縄発祥のタコライスだって、コメに合う洋風のものという意味では純然たるニッポンの洋食だし、モスのライスバーガーも同じだ。
まあ、このあたりをウダウダ書いているとキリがない。兎にも角にも洋食バンザイを書きたいわけだ。
先日、久しぶりに銀座の「南蛮銀圓亭」に出かけた。洋食の名店の一つだ。銀座エリアには洋食屋さんがいくつもあるが、この店は価格面や雰囲気などトータルで使い勝手の良い店だと思う。
仰々しい感じが強すぎても落ち着かないし、カジュアルすぎると使い勝手が制約される。その点、この店の立ち位置は、デートに良し、接待もアリ、はたまたカウンターの端っこに陣取れば一人メシも問題ナシである。
前菜がちょこちょこオーダーできるのが酒飲みには嬉しい。オードブルの小皿盛りが、3皿、4皿、6皿、8皿から選べる。一つがちょこっとだからアレコレ選ぶ楽しみがある。この画像はトリッパ。
ワガママな私に嬉しいシステムだ。一般的なオードブル盛り合わせだと、食べたくないものも入っているし、コース料理だってお仕着せの野菜なんかを食べないとならない。
いい歳して好き嫌いが多い私がダメダメなのだが、ダメダメなまま生きて行くと決めている以上、オーダーの自由度が高い店はそれだけで有難い。
カルパッチョやテリーヌのような前菜をいくつか頼んで酒をグビグビしてホロ酔いになった頃に一品料理の登場である。
ベシャメルソースが大好きな私としてはクリームコロッケは欠かせない。画像はカニとエビを一つずつ盛り合わせてもらったバージョンだ。
クリームコロッケってどうしてあんなにウマいのだろう。いつだって顔がほころぶ。“ベシャメラー”である私としては、死んだ時に棺に入れてもらいたいと思えるほどだ。
上に載せた画像のグラタンもベシャメルソースだ。味の傾向がかぶってしまうが、かぶって結構、かぶってくださいって感じである。
この日のシメは子羊のグリル。かなり美味しかったはずだが、私の記憶にはベシャメルソース系ばかりが強く残っている。
分かったように書いてはいるが、平たく言っちゃえば私の味覚は基本的に「お子ちゃま」なんだろう。
でも、お子ちゃま感覚だってバカにしたものではない。世の中の子どもは世間体や店の雰囲気、他人様の評判など気にせずに、自分にとってウマいかマズいかを判断する。
うん、もっともらしい言い訳だ。
ベシャメルソース、デミグラスソース、そしてタルタルソースにケチャップ味etc.全部が大好きだ。
きっと、子ども時代に感激した「デパートの食堂のお子様ランチ」が原点なんだろう。あれを食べる時に感じたワクワク感、アゲアゲ気分を味わいたくて、今も洋食を追いかけているのだと思う。
2 件のコメント:
明治生まれの私の祖父は芝出身でしたが大正当時の若者的には近くの銀座よりも浅草だったみたいで、健在だった頃、震災前の12階の話などをしてくれたものです。その話の中で浅草で食べたテキはうまかったなあと語ってましたが、テキがビーフステーキの略だとわかったのは少し経ってからでした。ザギンのシースーじゃないですが、訛りとはまた違う独特の言い回しが東京には昔からあったみたいですね。そして100年前はそういう食事がお洒落の最先端だったのかもしれません。
そしてそういう祖父の娘である自分の母親も和風洋食(?)が好きですから、自分の好みもやっぱりそっちに向かいますね。
ウチの祖父も常にテキという言い回しをしていました。ステーキよりもビフテキだったからテキ一辺倒だったんでしょうね。
牛丼も必ず牛めしと言ってました。
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