すっかり高値安定になってしまったが、ウナガー、ウナギストである私としては頑張って鰻を食べ続けている。
どこの店に行っても中高年以上の人しかいない。若者はもちろん、青年、もしくは30代ぐらいのいっぱしの大人も見かけない。
ザッと見ても50代以上の人ばかりである。これって危機的状況である。中高年から上の世代しか食べなくなったら当然いずれは廃れてしまう。
バカみたいな値段を取るイマドキの寿司屋には若い人もドシドシ押しかける。得体の知れない熟成肉を高値で食べさせる店も同じだ。すなわち、必ずしも値段ばかりの問題ではないようだ。
なぜだろう。ジジくさいイメージなんだろうか。だとしたら実にもったいない。
あんなウマいものを若者世代にしっかり伝えていかないと鰻食文化が消えて無くなっちゃいそうで心配である。
先日、初訪問の鰻屋さんに出かけた。銀座のやや外れ、汐留寄りにある「神田川」という店だ。
店名からすると、独特な髪型で有名な料理人さんの系列のように見えるが、まったく関係ないらしい。明治初期から続く老舗だとか。
近代的なビルの地下に結構なスペースで構える。お店も近代的で綺麗だ。渋い風情を求めると少しイメージが違うが、それはそれで使い勝手が良い。
繁華街から外れているせいもあって、知る人ぞ知る的な隠れ家感があるのも良い感じだ。お店の人の対応も丁寧だし、鰻以外にもツマミになるような料理が揃っている。使い勝手が良い店だと思う。
あれこれ頼んだ中で印象的だったのがウナギのともあえである。アンコウ料理の定番だが、ウナギバージョンは初めて食べた。
苦みの無い部分を使っているようで、まろやかで酒のアテとして大活躍である。やたらめったら都内の鰻屋さんを食べ歩いてきた私が初めて味わう一品だったから珍しいのは間違いない。
うざくも肝焼きも丁寧に仕上げられていて、いわばキチンと美味しいという表現が的確だと思う。
私がウナギバカになってしまったきっかけは、もう30年ぐらい前にどこかで食べた白焼きである。
甘いタレ風味ではなく、わさび醤油で食べるウナギの味に別次元のウマさを感じて、おまけに冷酒との相性がやたらと良かったことで一気にハマったわけである。
どちらか一つ選べと言われれば、白焼きより普通の茶色い蒲焼きを選ぶ。でも私の“鰻道”はあくまで夜が基本だから、鰻重やうな丼だけをかっ込んで終了というパターンは基本的にあり得ない。
あくまで、蒲焼きの鰻重を食べる前に白焼きをツマミに冷酒を一献という段取りこそが大前提になっているわけだ。
前戯みたいなものである。それ無しでコトは成り立たない。前戯もないままあんなことをしたって楽しくない。ある意味、前戯こそが楽しいという考え方もある。
それと同じだ。「白焼きイコール前戯」である。前戯がウマければ本番だってまず大丈夫である。
白焼きがウマい店なら真打ちの蒲焼きは間違いなくウマい。これはウナガー業界の真理である。
この店の白焼きも良かった。塩加減が強すぎず、冷めない配慮で皿もしっかり温めた状態で出てきた。幸せな気分で冷酒を味わえた。
目と鼻の先にウナガー業界では誰もが知っている竹葉亭本店がある。そちらは情緒たっぷりの建物がデンと構えている。
外からパッと見た感じでは、風情に溢れる竹葉亭に目が行ってしまうが、ビルの地下に控えめ?に構えるこちらの店もかなりの高水準だと思う。
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