冬の醍醐味といえば熱燗だ。熱々にしてもらった燗酒をクイっとやる瞬間の喜びはこの季節ならではである。あまり美味しくない日本酒でも熱々の燗酒にすればそれなりにイケる。
好みに合わない冷酒や開栓して時間が経ち過ぎた冷酒を飲まされるなら熱燗が無難である。銘柄のウンチクなんかも聞かされずに済むのが良い。ズラっと銘酒を揃えている店だろうと「熱々の燗酒ちゃうだい」の一言で黙って熱燗専用の無難な酒が出てくる。
熱燗のウマい季節にはそれに合う肴が揃っているのも嬉しい。塩辛いモノなら何でも合うのだが、やはり冬ならでの珍味を並べるのが季節感として正しい。
焼いた白子あたりを突っつきながらチュルチュルと燗酒をすする。オジサマにとってパラダイスだ。若い頃からこういう取り合わせは好きだったが、やはり人生の厄介事をくぐり抜けてきた中高年になってからのほうが染みる。人生劇場も酒を飲む際のスパイスみたいなものかもしれない。
香箱ガニ、セイコガニ等々、いろんな呼ばれ方があるズワイのメスも初冬ならではの逸品だ。内子外子のねっとり感がウリだ。ご飯のおかずというより酒の肴として活躍する存在だろう。
北陸のほうでは開高健が好んだことで知られるその名も開高丼が人気だ。ドンブリ飯の上にセイコガニの中身を7杯だか8杯分ほど盛り付けるらしい。おかずとして大活躍しているわけだが、私にとってはセイコガニはやはり酒の肴だ。ご飯の友というイメージは無い。
「身が無いから嫌い」と言う野暮なオジサンもいるがもともとそういうカニではない。いわゆるカニの身肉を楽しむなら他のカニを食べた方がマシだ。昔は安価だったが最近は名称にこだわるようなイメージ戦略のおかげで妙に高くなったのが残念である。
上の画像、香箱ガニの隣にはスジコ、手前は甘海老の昆布締めだ。新富町の穴場的お寿司屋さん「なか山」での一コマだ。こんな組み合わせで燗酒を飲んでいたらありとあらゆる悩み事さえ瞬間的には忘れることが出来る。うっとりする時間だ。
東京ではイクラは塩漬けが定番だったが、今は醤油漬けが主流になった。醤油漬けも大好きだが、塩イクラが絶滅危惧種みたいに珍しくなってしまうと昔ながらのそっちの味も恋しくなる。味覚の欲求はつくづくワガママだと思う。
スジコだと塩漬けがまだまだ定番のようだ。塩味のほうが酒の肴にはより魅力を発揮すると思う。箸で頑張ってほぐした断片を口に放り込んで燗酒に後を追わせる。こんな作業も楽しい。
イクラを小さいスプーンで食べるのもラクチンだが、スジコのあの簡単にはいかない厄介なところが愛おしかったりする。個人的な感覚です。スイマセン。
冬の定番と言えばアンキモである。あのネットリした食感と独特の旨味とコクは酒の肴業界の英雄的存在だ。安酒場だとネットリ感がまるで無いハムみたいな変なのが出てくることがある。真っ当な店で頼むのが大事だ。
白子にしてもアンキモやスジコ、他にも冬の定番・カラスミあたりは揃いも揃って成人病的視点から見ると避けるべき食べ物である。ここがツラいところだが毎日毎日食べるわけじゃないなら気にし過ぎるのもシャバダバである。
私も「たまにだから」と自分に言い聞かせて食べるようにしている。問題は「たま」の間隔、頻度だろう。月に一度なら本当に「たま」だ。週に一度だとちょっと怪しい。私の場合は「中3日」ぐらいを「たま」だと考えている。毎日食べなければ大丈夫なのに中3日も間隔が開けばたぶん問題は無いはずだ。たぶん。
牡蠣も冬の味覚だ。疲れ気味の時や無理してオネエサンがたとの“試合”が立て込んだりすると無性に牡蠣が食べたくなる。鰻より牡蠣のほうが元気回復に効き目があるように思う。実際のところは不明だ。
牡蠣グラタンや牡蠣パスタなど外食で牡蠣料理を頼むとちょこっとしか牡蠣が入っていないことが多い。あのシミったれた感じがイヤで牡蠣は主に自宅で摂取している。
レトルトをベースに適当にアレンジしたパスタソースを作って茹でたてパスタを和えるだけで贅沢牡蠣パスタが簡単に完成する。パスタ麺100グラムに牡蠣を10個以上入れるのが私の定番だ。
ついでにエリンギやアサリなどを加えると多品目摂取という健康課題もこなしたつもりになって気分が良い。エビやタコを加えるのもアリだ。
何でもかんでも具材として入れていると一食のパスタの材料費が3~4千円になることもある。富豪級である。富豪というかバカというのが正しいのかもしれない。
よく分からない結論になってしまった…。
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