そこそこ食通ぶったつもりでいる私はお寿司屋さんに行ってもコハダや海老、穴子あたりの“仕事系”を分かったような顔をして食べる。もちろんそれが好きで食べているのだが、同じぐらい好きなのが「ウニ、イクラ」である。
昔から同伴やアフターで寿司屋に行った水商売のオネエサンが「トロ、ウニ、イクラ」ばかり注文してヒヒオヤジがアタフタするような笑い話をよく聞く。
そんなイメージのせいでウニやイクラを注文するのが私はちょっとだけ恐い。値段の問題よりも味の分からないヤツだと思われちゃうんじゃないかと変な心配をしてしまう。自意識過剰である。
女子供の皆さんには申し訳ないが、ウニやイクラはいい歳した男が嬉々として食べるものではないという思い込みがある。私だけだろうか。たぶん私だけかもしれない。
「ヅケとコハダとアオヤギ、あとウニも食べようかな」。本当はウニばかり食べたい時でもこんな言い方をしてウニはついでに食べるような顔をしてしまう。バカみたいだ。
昔から時おり函館まで行ってアホほどウニ丼やイクラ丼を食べまくるのも日頃のそういう意味不明な自意識に対するウップンばらしなのかもしれない。
最近こそ鈍感力が増してきたせいで昔よりはウニ、イクラを普通に注文するようになったが、心のどこかでモヤモヤした気持ちは残っている。だから若い女子を連れてお寿司屋さんに行った時はちょっと嬉しい。あくまで連れの女子のせいでウニ、イクラばかり頼んでいる顔をして実は私がバクバク食べる。
イクラに関しては人工的な味付けだから当たりハズレは少ないがウニはなかなか厄介である。カジュアル過ぎるお店で出てくるウニはハズレの可能性が高い。マズいウニほどイライラするものはない。ミョウバンの苦さぐらいならともかくウニ自体に臭みがあると萎える。
カジュアル系の寿司屋でも幅広くチェーン展開しているような寿司屋なら大量仕入れの強みのせいで案外マトモなウニが出てくる。ちょっと気取った個人店のほうがダメウニに遭遇する可能性は高い。もちろんウニの個体差も激しいからその日によって当たりハズレの波があるのは仕方ない。
一人あたりウン万円も取るような高級店ならハズレの確率は低いが高級店なら上モノのウニを常備するのは当然である。それよりも手軽な店でウマいウニに当たったほうが喜びは大きい。そういう時はウニを何度も注文してしまう。
ウニの難しさ、奥深さはウン十年も修行(客として)してきた私にもすこぶる厄介だ。醤油で味わったらさほどでもないのに塩だと抜群に美味しく感じたり、当然その逆もある。海苔と一緒に味わうとウマいのに海苔無しだとたいしてウマく感じないパターンやその逆もある。
ムラサキウニ、エゾバフンウニが寿司屋で食べるウニの代表だがどちらの品種でもその難しさは一緒だ。九州の赤ウニもしかり。醤油、塩、海苔との組み合わせで印象は大きく変わるし個体差でもまた変わる。
ミョウバンを使っていたらダメ、塩水ウニは間違いないといった定説も決して絶対ではない。ミョウバンの加減によってはちっとも気にならない上モノもあれば塩水ウニだって臭くてまるでダメなヤツもある。
いわば実際に口に入れるまでよく分からないのがウニの厄介さである。だからこそおみくじを引くように常にドキドキしながら食べるのが楽しい。
普通に美味しいウニに遭遇した時はもちろん上モノに当たった時はつい何回も注文したくなる。同じものばかり頼むのもヤボに思えた時には「さっきのウニ、手巻きで食べてみようかな」などと変化球気味に注文してごまかす。やはり自意識過剰みたいだ。
ウニの話を書いていたらまた函館に行きたくなってきた。近いうちにウニ攻め旅行を計画しようと思う。でもきっと函館名物のファストフード「ラッキーピエロ」に行きまくって“チャイチキ”ばかり食べてしまうような気がする。
よく分からないオチになってしまった…。
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