世の中がやたらと窮屈になってしまった象徴的な話がオリンピック女子体操エースの飲酒喫煙問題だろう。19歳の大学生がタバコと酒を理由に代表離脱となりとっとと日本に帰国させられたそうだ。
ルールはルールだ。守らないといけないのは当然だ。とはいえ人間だからルールを逸脱することもある。問題はその後だ。マリファナを吸っていたとかならともかくタバコを吸ったぐらいでオリンピック代表の座を引きずり下ろす判断は大人として適切だろうか。
厳しく注意するとか、一定期間の外出禁止とか、罰を与える方法はいくらでもある。一般には想像できないぐらい厳しい鍛錬を経て五輪で活躍するチャンスを得た人である。代表に選ばれるために積み重ねた努力をいとも簡単に剥奪するのはさすがに気の毒だ。
自己責任だ、自業自得だ、無責任だといった声も多い。お咎めナシとはいかないのは理解できる。批判されて当然だが、罰の重さとしてはたして適当な判断なのかは疑問だ。
19歳の飲酒や喫煙に世間が目くじら立てて騒ぎ立てるようになったのはいつ頃からだろう。写真週刊誌が未成年を伴って飲酒したアイドルなんかを糾弾するようになってからだと思う。ここ15年、20年ぐらい前からだろうか。
私が若造だった頃、すなわち昭和の終わりごろは「高校卒業」が一つの分かれ道だった。高校さえ卒業していれば学校の先生だろうと警察官だろうと飲酒喫煙の現場を見ても問題視しなかった。
高校の卒業式のあとの飲み会に先生たちが参加してくれるのも普通のことだったし、歌舞伎町で酔ってフラついていても警察官から「大学生か。気をつけて帰れ」と言われるだけだった。
近年、成人年齢が何だかよくわからない理屈で18歳になった。でも酒やタバコは20歳からというヘンテコな境界線はまるっきり意味不明だと思う。
18歳なら選挙に行ける。パチンコというギャンブルも出来る。結婚だって勝手に出来る。なんてったって成人である。もっと言えば風俗店に入れるし、風俗店で働くことも許される。いわばハードな風俗店で驚天動地な変態プレーを楽しんだり、それで稼いだりすることも可能な年齢だ。
そう考えると19歳のタバコや酒をめぐる大人たちの対応はもう少しおおらかであって然るべきだと思う。鬼の首でも取ったかのように血祭りにあげるような話ではない。キチンと注意するだけでいいと思う。
完全無欠、品行方正、聖人君子じゃなきゃいちいち叩かれる窮屈な風潮はネット社会の副産物だと思う。ネットの世界だけでオタクが騒いでいるだけならともかく、今回の事件のように実際の社会の現場でもそんな傾向が強まっているとしたらヘンテコな話だ。
都知事選で一躍時の人になった石丸さんだって既にアンチによる揚げ足取り的アラ探しが騒々しくなっている。幼稚というか、何だかチマチマした世の中になったことを痛感する。
些末な言動一つをあげつらって身勝手に自分なりの正義を一方的に振りかざしながら目立った人を圧殺しようとする。実にチンチクリンな精神性だ。有名人の不倫タタキにしてもモテる人への嫉妬にしか思えない。あんなもの単なる家庭内のトラブルでしかない。
それこそ昭和のモテ男「火野正平」なんて当時は国民総出で普通に面白がっていただけで教科書的正義を振りかざして非難する人は少数派だった。
今でこそゆったりと自転車を漕いでいる火野さんだが、数十年前はそれはそれはお盛んだったようで、追っかけるレポーターも追っかけられる火野さんもそれ自体をショー化していた印象さえあった。
「時代が変わった」「もうそんな時代ではない」。バカの一つ覚えみたいに何でもかんでもそんな言葉で片付けようとするのも凄くイヤだ。
時代という言葉を都合よく使って、あたかも今がすべて正しいと錯覚させたがる風潮が薄気味悪い。いつの時代にも必要なはずのおおらかさなど全てが断罪されてしまう。
例の石丸さんの発言のキリトリで「女、子ども」という部分が随分とバッシングを浴びたようだ。前後の話の流れによっては普通に使う日本語の常套句である。
「女、子どもには難しくて理解できないよな」といった使い方だと差別的意味合いになるが、「こんな重いモノは女、子どもには持たせられない」といった使い方は逆に親切心に溢れた言葉にもなる。
短絡的で偏狭な攻撃心だけで悦にいっている正義中毒みたいな現象は一種の現代病だ。この病気がもたらすのは「言葉狩り社会」である。これってかなり怖い。歪んだ全体主義にも繋がりかねず、かつての言論統制と同様の危険性すら感じる。
ちょっと話がそれてしまった。
まあ、私ごときがここで何を書こうが世間の空気を変えることなど不可能だ。そんなことは分かっているが、今はまだ自由な言論が許されているわけだから一人でも多くの人が怪しげな世間の風潮に「?」を言い続けることは無意味だとは思わない。
なんだか力んだ書き方になってしまった。
それにしてもつくづく思うのは自分がもう人生後半戦の年齢に達していて良かったという点だ。
こんな窮屈な時代に若者だったら大変だ。愛のある毒舌ひとつ口にすることが出来ない。ちょっと脱線するだけで死刑判決に相当する罪を犯したかのように糾弾される。これから現役世代の中心になっていく若者にはご苦労さまという言葉しか出てこない。
全国的に今年も猛暑がやってきた。日本中が暑さでイライラする。そんなイライラに連動するかのように身勝手で自己満足的なくだらない正義感モドキで他人を攻撃する人が増えちゃうのが心配だ。
1 件のコメント:
最初は喫煙だけ?と思ったら、よくよく読んだら本人、親御さん、体操団体関係者で話し合って飲酒の話になり、味の素ナショナルトレーニングセンター内の宿舎で飲酒したとのこと。あっこりゃ駄目だわ。トレセンの中のことをチクられるのはもう最後の最後で本人も参りました!と思ったと思います。
コメントを投稿