ホテルニューオータニの「トレーダーヴィックス」。もう30年以上前から存在し続けるレストランだ。かみ砕いて表現すればトロピカルレストランの元祖であり、今風に言えばインターナショナルフュージョンキュイジーヌ(なんだそりゃ?)の先駆者とでも言おうか。
インテリアはポリネシア方面を意識した南国調。かといって歴史がもたらす重厚感もあり、どこにも似ていないという良さがある。アチコチにトーテムポールのような飾りがあって、屋根材なんかも椰子のテントみたいで楽しい。最先端の格好いいレストランとはまるで違うけどそうしたレストランが醸し出せない独特な雰囲気を持つ。
ウェイターさんをはじめとするスタッフも最先端レストランの勘違いお兄さんみたいに頑張りすぎちゃってそっくり返りそうな人は皆無。全体に穏やかな空気。
メニューも分かりやすいものばかり。でもホテルレストランだけあって、牛肉も鴨肉も羊肉も海老も魚も実にちゃんとした素材で丁寧に料理される。おじいさんやおばあさんでも単純明快に美味しいと思える味付け。
前菜というかツマミ類も充実。料理が載っている皿の下に加熱用の火がともされてあり、小さいバーベキュー串焼なんかも、炙るための炎が卓上で燃え続ける。なんか楽しい。
その昔、まだ大学生の頃、ニューヨークに旅行をした際に分不相応にかのプラザホテルに泊まったことがある。夜、出歩く気が起きなかったある晩、ホテルの中にトレーダーヴィックスがあることを知って訪れた。日本と同じ雰囲気で、有名なカクテルメニューも日本と同じだったので妙に興奮した記憶がある。そりゃそっちが本場なのだから当たり前だが・・・。
大学生時代からトレーダーヴィックスファンだった理由は中学生時代にさかのぼる。私は悪友グループの中でも、割と外ヅラがよかったせいか、ある友人の父親に気に入ってもらって二人きりで出かけた。
友人の父親と二人で食事というシチュエーションにちょっと困ったが、その父親氏、自分の息子に関する相談事で悪友である私を呼びだした。いま思えば、グレていく息子を思って、悪友を呼び出してやんわりといさめることが目的だったのかも知れない。
その時、連れて行ってもらったのがトレーダーヴィックスだった。中学生にとってはとても大人な空間。自分の親に連れて行かれるレストランとは雰囲気が違うし、なんとも格好いい世界に見えて、その友人の父親をそれだけで尊敬してしまった。
その後どんな話をしたのか覚えていないが、お説教にもきっと素直にうなずいて、完璧にその父親の軍門に下っていたことは間違いない。
さて、トレーダーヴィックスの料理のなかでも楽しいのが「皇帝焼きそば」。基本的に普通の焼きそばです。本格中華のそれよりも、日本の焼きそばに近い感じ。でも「皇帝」なので具材がすごい。ほとんどステーキのような美味しい肉やプリプリの海老、極上の豚ロースに蟹や帆立がゴッソリ入っている。
お値段も皇帝ゆえに5千円ぐらいする。こんな値段の焼きそばにはなかなか出会わないが、なかなか味わえない焼きそばであるのも確か。面白みのない肉料理に5千円払うのならこっちの方がいい。
最近では、極上素材で作った3千円のハンバーガーが人気メニューになっているとか。こちらはレストランに隣接するバーの専用メニューなので、いまだ食べられずにいる。
まあ極端なグルメブームややたらとスノビッッシュな店ばかりもてはやされる風潮に違和感を覚える人には、まさに憩いの空間だと思う。近いうちにまた行きたい。
2008年1月31日木曜日
トレーダーヴィックスの魔力
ラベル: 中年グルメ
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