2014年6月30日月曜日

オーダーシャツ


30代になった頃から、男は着るものに無頓着なほうがカッコいいと思い始めてテキトーなカッコで過ごしていた。

オシャレ番長みたいな男には今でも抵抗がある。まあ、そんなこと言っても、いい年した大人の男があまりにもブサイクな身なりでいるのもマズい。

だいたい、世間様なんてモノは結局は人を身なりでしか見ていなかったりする。だから40代になった頃からは、そこそこ真っ当なものを身につけるようになった。

チト面倒くさいことである。

デパートや洋服屋に行って、鏡の前で自分を見ながらアーでもないコーでもないと、服をとっかえひっかえする行為自体が苦手だ。

店員の見え透いたお世辞にヒョコヒョコ喜ぶほどマヌケではないし、それより何より、ああいう場所に行くと自分の体重増加を実感させられるから腹が立つ。

わざわざ面倒な場所に行って、カネまで払ったのに、「あ~あ、痩せないとマズいなあ」という不快な感想しか残らない。災難みたいな話である。

ということで、スーツとかシャツはオーダーで注文するようになった。オーダーと聞くと妙に高そうだが、そんなことはない。スリーピースのスーツだってヒトケタ万円で余裕で作ってもらえる。

そこそこの生地を選べばそれなりの値段になるが、そこはさすがにエラそうな顔で生きている中高年である。少しは頑張る。

ブランドものの既製服に妙な値段を支払うのなら、上質な生地でオーダーするほうがよっぽどマシである。男のスーツの場合には間違いなくそれが正解だと思う。




ところで、ノーネクタイというスタイルが夏の常識になって随分経つ。いつのまにか亜熱帯化しちゃった東京で日々暮らしているから、この習慣は有り難い。

ノーネクタイでも基本はスーツ着用が一般的である。ネクタイを締めずにスーツを颯爽と着こなすのはなかなか難しい。

そこでシャツの襟を少しだけ高くしたドゥエボットーニと呼ばれる形状のシャツが普及したのはご存じの通り。襟の高さゆえに一番上のボタンが二つ付いていることが名前の由来だ。

ノーネクタイの季節用にシャツもオーダーで注文しているのだが、オーダーだから割と細かいわがままを聞いてもらえるのが嬉しい。

ネクタイを締めない場合、一番上のボタンなど留めるはずがないのだから、ドウェボットーニシャツの2個ボタンは飾りみたいなものである。

今年作ったシャツは、襟の高さを通常のドゥエボットーニより高くしたのだが、一番上のボタンは1個にしてもらった。すっきりして良いと思う。

襟の高さも好きに変えられるのだが、あまり高くしちゃっても昭和40年代の石原裕次郎か、はたまた歌舞伎町のホストみたいになっちゃうから、微妙なバランスで収めたいところである。



結局、アレコレ検討しているうちに、襟の高さは結構な高さなってしまった。ちなみにこの画像、恐る恐る完成品に袖を通した時の私である。仕立て屋さんがFacebookにアップした画像を拝借してみた。

自分としては「裕次郎やホスト」まで至らずに無難に収まったと自負しているのだがどんなもんだろう。

襟の高さよりも気に入ったのが、ボタン全体の位置である。ボタンの間隔といったほうが的確だろうか。

ノーネクタイの場合、一番上のボタンを外すのが普通である。フランス人だったら2番目も外す。イタリア人なら3番目も外す。

父がイタリア人、母がフランス人である私の場合、当然、2番目のボタンは外すのが基本姿勢になる。

ただし、2番目のボタンを外した場合、シャツによっては単純にだらしない雰囲気になってしまうことが珍しくない。

ひと昔前に流行った「チョイワル」がひねくれたみたいな感じだ。私は根本的にチョイワルって言葉が大嫌いである。大ワルにもなれないシミッたれた中年への蔑称だろう。

かといって、一番上のボタンを外しているだけでは、売れない政治家とか冴えない公務員みたいでこれまたイヤである。

で、考えついたのが、ボタンの間隔を短くすることである。ボタンの数を多くして間隔を縮めれば良いわけだ。

こうすれば、ボタンを二つ外してもバカっぽくならないし、ムダ毛という名の情けない胸毛がチロって覗いちゃうこともない。

そんなこんなで「妙に高い襟」、「妙に数が多いボタン」という到達点にたどりついた。
毎年毎年、私からブツクサ文句ばかり言われ続けた仕立て屋さんも、今シーズンのシャツの仕上がりには納得の様子だ。よかったよかった。

でも、支払いの際に使った私のクレジットカードが限度額の関係で承認されなかったらしい。実にお気の毒である。

限度額の設定がない別のクレジットカードで支払いをやり直そうと思ったのだが、忙しくてまだやれていない。

お気の毒である。

こんな話を書いている暇があったら、さっさと支払わないと男がすたると思う。


まあ、いいか。

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