2019年12月16日月曜日

居心地と味の関係


飲食店の評価ほど難しいものはない。ネットのクチコミがすべてみたいなバカげた風潮が支配的だが、いい歳した大人があれに左右されるのはどうかと思う。

いつもセンベロ居酒屋で満足している人が客単価1万円の小料理屋に行ったら価格の面で不満だろう。ここのタピオカは最高よ、と言われてもオジサマ族にはちっとも分からない。

人によって感想や好みは違って当然だから、あくまで自分の感覚だけが頼りである。

もちろん、誰が食べてウマいものも沢山あるが、店の評価となるとまた違う観点も必要だろう。

すなわち、居心地である。大人の価値判断にとってこれは重要だ。エラそうな料理人を前に、かしづくように食べさせられる店など金をもらっても行きたくない。

平凡な味だろうと丁寧に居心地良く過ごせる店のほうがマシだ。



最近ちょくちょく訪ねるようになった新富町のお寿司屋さんでの画像だ。ここよりウマい店は他にもあるだろうが、初めてノレンをくぐった時から居心地が良い。店主の距離感が私の居心地を快適にしてくれる。お仕着せがましくない点も助かる。

オーソドックスな美味しい寿司を楽しめるが、穴子に海苔塩をふったり、時折遊び心を見せてくれて楽しい。

プチ常連になったお店と違って大常連?になっている店だと、変わったものを出してくれたり、こっちからワガママが言えるから尚更居心地は良い。



引っ越した関係で、この半年すっかりご無沙汰している目白「鮨おざき」で頼んだエビフライである。

この半年で2回目の訪問という不義理な客なのに優しい店主がタルタルソースまで準備してくれた。

生きている車海老をフライにするんだからウマいに決まっている。ホントはこれを10本ぐらい食べたい。




上モノのクジラベーコンにイバラガニの内子だ。酒のアテとして最高である。炭火の焼き台で藁で炙ってもらったカツオのタタキも絶品だった。

香箱ガニがまるごと入った茶碗蒸しも思わず無言になる美味しさだった。外子も内子も脚肉も全部が入っている。

今の時期、このカニはどこの店でも普通に出てくるから、あえて変化球勝負にしてみたそうだ。



ウニも3種類を味比べした。実に贅沢な時間だ。これ以外に刺身や特製ツナサラダもツマミで食べたから、当然、握りを食べる余力は無くなっていた。本末転倒かもしれない。

引っ越してから近所に3軒ほどプチ常連のお寿司屋さんが出来た。プチだから余計なことはあまり言わずおとなしく座っている。

そのせいか、ツマミを食べすぎることなく、いつもたいてい握りを8貫とか10貫も食べる。まあ、お寿司屋さんに行った以上は当然の流れだ。

以前は「鮨おざき」で3貫ぐらいしか食べないこともあった。いま思えば、握りに辿り着けないほどワガママなツマミを食べまくっていたことが原因だ。それはそれで問題だ。



生イクラと醬油漬けイクラを半々に盛ったミニどんぶりを食べているようでは、せっかくの握り寿司に辿り着けないのも仕方がない。

常連という立場の落とし穴みたいなものである。やはり節度をもってごく普通に過ごした方が賢明かもしれない。

お寿司屋さんのようにカウンターを挟んでプロと向き合う店は、やはり一度や二度ぐらいでは店の特徴は分からない。評価しようということ自体がトンチンカンだろう。

何度も行きたくなって、実際に何度も行って居心地が良くなったら、当然、たいていのものが美味しく感じる。

味には店の居心地が大きく関係している。人間の味覚なんてそんなものだと思う。

居心地が良い店がウマい店。実に単純だが、あくまでそういうこと。





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